2015福島三春町ブルーベリーシンポジウムに参加した
 ブルーベリーシンポジウムって一種のお祭りみたいなもので、今年は三春(みはる)町というところだ。
滝桜というサクラの樹で有名らしい。
場所はどこ?。
調べたら、福島県郡山市の隣町だ。

 オレんちからは、クルマで3、4時間ぐらいだ。
というわけで前もって予約送金を済ませておいて、当日は早朝から出発!。
余裕を見て、かなり早めに着いた。

 早く着くようにしたのは、シンポジウムの講演が始まる前に、大関ナーセリーの新カタログを貰ったり、各種メーカーの展示品を見物したり、他の参加者を探しておしゃべりしたりと、やることが多いからだ。
講演が始まってしまうと、展示会場の見物ができなくなってしまうからな。
あと、こういう集まりのときは、自ら他人に積極的に声をかけていくようにしないと、情報が得られない。

 なにしろ、会場は知らない人がほとんどだから、そもそも心細いんだよなあ。
名札を見ても、名札は首からぶら下げるから、お腹のへそのあたりにあって見づらい。
だから、名札を見て人を探すのは、けっこう難しい。
顔を見ても、知らない人と目を合わせるのはコワイしなー。
とはいえ、なにぶん果樹栽培はべらぼうに長いつきあいになるので、10年前に見た人とかよくいる。

 さてさて、さっそくシンポジウムの発表会が始まった。
福島県での開催ということで、原発事故の放射能に関して、ブルーベリー観光農園への被害、および、甚大な風評被害の発表がつづいた。
その被害は事実であろうけどさ・・・。
聞いててツラくなったので、その被害については丸ごと省略。

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 さて、三春町ブルーベリーシンポジウム二日目は現地見学会だ。
オレも同じブルーベリーを栽培しているから、見学園の状況を見れば、そりゃもう一目瞭然で、いろいろわかる。
今回の視察園は、いずれも傾斜地だった。
段々の耕地にはなっているものの、段々田んぼではなく、いずれも緩い傾斜地になっていた。

 経験からいって、傾斜地はブルーベリーの発育に向いている。
休耕田に植え付けた園は無かった。
つまり休耕田でのブルーベリーのよくある発育不良とは、無縁だった。
と、わざわざ言うのは、北国や標高のある高原では、ハイブッシュブルーベリーが主流になるけれども、休耕田に植えられた場合は発育不良になることが大変多いからだ。

 段々田んぼは高低差があって一見水はけが良さそうでも、元・田んぼは、オレ自身の栽培経験からいっても、予想外の苦戦が多い。
でも、今回のシンポジウムの見学園地は、元は桑園だったとかで、その問題とは関係なし!。
見学したハイブッシュブルーベリーは、どれも発育良く伸びていたなー。

 ブルーベリーは、高さ50センチくらいの位置で強剪定を施してあった。
このような強剪定をやると、良い場所では、枝が良く再生する。
もうちょっと詳しく述べてみよう。
強剪定については、いずれも樹齢5年か6年の、いままでの幹の発育がややジグザクに育った成木に、高さ50センチくらいで、太い幹を4本くらい残して切っていた。

 地面からすぐの根元から切るわけじゃない。
地上から、やや高めの位置で切ることで、結実用の枝も残したわけ。
高さ50センチくらいの位置であれば、結実用の細い枝も少々残せるので、この枝から収穫もできる。
そして切り詰めた幹からは、40センチくらいの新しい枝が、スクスクとツクツクと、よく伸びているぞおー!。
すこぶる成長が良い。

 またいずれの見学園も、スギ皮粉砕チップという、杉皮も5センチ以内に短く粉砕したものを根元に敷き詰めてあった。
これが生育に効いた!。
チップは、本来は牛などの床の敷き詰め用や、木材火力発電用の木片だったものだそうだ。
湿りやすい皮が混じったものは、水分が多すぎて2級品だったが、でもブルーベリー用には湿ってて一級品、というのが面白い。

■あとで写真を入れる■

 このチップが木の根元に敷き詰めてあった。
木材チップだけよりも、スギ皮まじりの方が、根の張りにイイ。
杉の繊維状の皮付きだと、すぐに水分が染み込むわけよ。
硬い木片チップのままだと、ある程度腐って細片化しないと水分が染み込まず、ブルーベリーの根が張らないからな。

 見学者も皆、このスギ皮粉砕チップの効果に気付いたらしく、「どこから購入したのか?」と、質問が集中した。
返答によると、1トン1万円で、放射能対策のため、遠方の栃木県から運んで入れたとのこと。
短く粉砕されていて、プラスチックゴミも混じっておらず、見事な品質だ。
短く粉砕、と、わざわざ言うのは、スギ皮というのは、元々は長ーい!からだ。

 長いスギ皮だと、フォークで突き刺して運ぼうとすると、スギ皮がずるずると長く残ってなあ・・・。
なかなか引きちぎれない。
小分けにするためには、毎回、力を入れて引きちぎらねばならず、この引きちぎりがメチャクチャ疲れるでやんの!。
そんな重労働な辛苦をしなくても済むように、ブルーベリー用に細かく破砕された【理想的な木材チップ】が、大量に供給されていたわけよ。

 なお、こんな理想的なチップが供給されるようになったのは、ごく近年のようであった。
というのは、園の地面の下方をチェックしたら、だいぶ以前に入れられたはずの古いチップが無い。
園内に敷かれたチップの色のくすみ具合で、わかる。
大部分は去年か今年に投入されたみたいだった。

 古いのは分解して消えてしまったにしても、5年以上前は与えられていなかったようだった。
ハイブッシュブルーベリーを育てるにあたって、特効薬のピートモスを与えるのは、鉢植えなら量が間に合っても、露地植えで園内全部をピートモスで分厚く敷き詰めるのは、高価過ぎて出来ない。
穴を掘ってピートモスを限定的に与えることになってしまいがち。

 ピートモスを限定的に与えると、ハイブッシュブルーベリーの根はピートモスのある範囲内にしか伸びない。
最初はよく伸びるが、それを見て安心しても、それはヌカ喜びなのだ!。
ピートモスのある狭い範囲に、根が行き渡ってしまったら、あとは結局、それ以上伸びなくて、発育の行き詰まりや、成長が鈍化してしまう。
地中では、周囲の土には全く根付いていない。
これは、大変よくあることだ。

 でも今回の見学園地では、どこの園も大変よく育っていた。
原因を考えてみると、ピートモスよりもずっと安い新型の木材チップが、近年になって登場して、ピートモスの代替品として大量に使用されたこと。
しかもずっと安い!。
これにうまく根が張って伸びたようだ。
そのうえで、古幹の切り詰めによって、【再生がてきめんに効いた】と、オレは判断した。

2008年 7年前だが、地面のチップは少ない。
http://new.peevee.tv/v?3udmb2

2015年 今年の動画。スギ皮粉砕チップの大量敷き詰めがされている。
https://www.youtube.com/watch?v=nwv4xW61Tew#t=24s

※ 上記動画で、園の名前は違うが、どちらも同じシンポジウムの見学園。

 新規投入の木材チップがてきめんに効いた、とオレが判断するのは、傾斜地の園内でも遠方の端っこの方に、木材チップが与えられていない場所があって、そこではあまり伸びていなかったからだ。
その端っこでは、木材チップも少量だし、その場に植えられたハイブッシュブルーベリーは、枯れた木や発育不良を起こしていて、小木のままだった。
ハイブッシュブルーベリーのよくある発育不良の姿だ。
元々の土壌のままでは、これが本来の姿なのだろう。

 これを元気良く伸ばすためには?。
『切り詰めて更新させる』と言うのが、従来のシンポジウムではよくある答弁だったけれど、衰弱した木を切り詰めたら、全てが終わってしまうよ!。
根元から切り詰めるなんて、できるわけないだろー!。
でも、今回のシンポジウムは違っていた。

 まず、理想的チップの大量投与によって、木に底力をつけたことと。
そのうえで切り詰め更新する、ということだ。
根元からじゃなくて、高さ50センチほどで、結果枝もいくらか残す。
このようなコンビネーション対策で、見事にハイブッシュブルーベリーの枝を伸ばしつつ、見事な果実も実らせていたわけだ。

 ラビットアイブルーベリーも、隅っこに少しは植えてあった。
観光客から8月ごろに「ブルーベリーはもう無いのですか?」と聞かれたので、それに対応するために一応植えたとのことだ。
見てみたら、このラビットアイが高さ2m近くに達して、一番よく伸びていた。
チップもろくに与えてなし。

 傾斜地の端の一番下側だったから、下方は腐葉土がたまりやすいから、土も肥えているのだろう、ということも挙げられるが、ラビットアイなら元々の土壌のままでも、よく育つという、よくある姿だ。
ハイブッシュとラビットアイでは、土壌適応性に、こんなにも差がある。
ここはやや寒い土地だから、栽培や結実には寒害があるため、、ラビットアイブルーベリーはあまり適していない。

 でも、台木としてなら充分使えよう。
でもここでは、ブルーベリーの接ぎ木は無かった。
三春町は積雪50センチほど積もるという。



 さて、あらためて見学園の木材チップについて、振り返ってみよう。
木材チップ投入は、根元に10センチほどで、わざと薄めに積んであった。
根元にどっさりと大量には積み上げない。
根元に盛り上げすぎると、虫が入ったりして良くない、とのことで、根っこの太い枝分かれが、地際でちょっと見える程度に、通気性が良くなるように、わざと薄めに敷いてある。

 ただ、オレがが手でちょっと掘って、チップマルチの地中を見てみたら、木材チップがやや乾き過ぎてるなー。
今年5月は、雨が降らずに乾燥気味だったし。
乾いていると、根が張りづらい。
でも、スギ皮の繊維状の皮部分のところが湿りがちなので、充分間に合っていたけどな。

 今回の視察園地では、散水設備のある園もあった。
南向きの斜面は、乾きすぎることもあるから、チップを湿らせるために散水することもあるわけだ。
ついでに言ってナンだが、傾斜地なので、正直、歩くと疲れがち。
キツめの上り坂もあって、息切れがしちゃう・・・。

 一輪車でチップを運ぶにしても、傾斜地の上り坂はつらかろう。
だから傾斜地の一番高いところに、チップをダンプで投入して、一輪車などで小分けに敷くときは、坂を下るようにする。
枝が曲がりくねって発育不振気味のハイブッシュ樹には、このチップ材を与えて、高さ50センチほどで大幅切り詰めで、あとはボカシ肥料とかを各自の好みで与えれば、グーだな。

 もしも休耕田で発育不振気味だったら、ただ木材チップを与えるのではなく、休耕田は地面を高ウネにして、そこへさらに木材チップを乗せて、植えればいい、ということになっている。
オレから見れば、ラビットアイへの接ぎ木でいいんじゃね?。
という意見も持っているけどな。
でも、接ぎ木苗を植えるにしても、ラビットアイであっても、高ウネにしてマルチも載せて育てれば、発育にいっそう良い!、だろう。

 後日になってから得た情報を、今ここでまとめて述べてしまうとだな。
元・田んぼには、木材チップを厚さ1.5メートルくらいも積み上げてから植える!、という凄い力ワザがある。
高ウネじゃなく、田んぼの面積全部に投入して、敷地自体を盛り上げる、という豪快な方法だ。
そんな高さにまで入れるのかよ!、と驚いたよ、オレは。
周囲の田んぼや道路よりも、1メートル以上も高くしてしまう。

 木材チップだけで、だよ!。
田んぼへ全面的に、木材チップの超ド級・大量投入は、現実に行われている方法だよ。
目の高さぐらいにまで、そんなに高く盛り上げるのなら、もう、高台の農地になってしまってるわな。
周囲の田んぼよりも、そんなに土地が高くなれば、排水性も良くなるわな、さすがに。
木材チップは年々分解して沈下していくけれど、8年経っても周囲の土地よりも、高さがまだ80センチは高かった。

 露地植えで園内全部をピートモスで分厚く敷き詰めるのは、高価過ぎて出来ないが、
露地植えで園内全部を木材チップをで分厚く敷き詰めるのは、安価なので出来る。

 木材チップは産業廃棄物みたいな一面もあって、大変安く入手できる場合があるからだ(ゴミ?)。
木材チップ農地?の表面を歩くと、フワフワと上下するよ。
ブルーベリーの原産地のピートモス地帯のように、地面がすべて有機質でできた地面ということになるかな。

 あと、最近のパテント品種は、買った苗のまま使うという誓約書があって、接ぎ木できない!、という制約があるから、地面が分厚い木材チップ層、というのは休耕田のブルーベリーにも有効な対策だろう。
大型トラックで搬入するから、農道が広くないとできないが。
オレんとこは道が狭いのでダンプが入らず、実現できんけど。



 さーてさてさて、三春町シンポジウムで、数カ所の見学園を一巡したので、今年のシンポジウムは全て終わって終了!。
あとは解散で、各自、帰宅の道につく。
遠方から来る人のために、午後の時間はまるまる空いてある。

■あとで写真を入れる■
横田先生である

 今回のシンポでは、岩手県の横田先生による指導が絶賛されていたが(木材チップ投入や大幅切り詰め剪定)、茨城県にもブルーベリーの大先生として、つくば市の鈴木たみおさん、という人がいる。
10年前から知ってて、というかオレは鈴木さんのことはよく知ってても、鈴木さん本人から見たオレは大勢の知り合いのうちの一人なのかもしれないが、同じ茨城県在住ということで、今回、オレと帰る方向が同じなので、頼んでオレのクルマに乗ってもらうことになった。

 というか、帰路途中で、那須高原のオレのブルーベリー園も見てもらうことになったのだ!。
大先生に来てもらって、光栄である。
ブルーベリーの光と影というか、シンポジウムなどでは、ブルーベリー園の新規就農は、華々しく取り上げられているものの、成功した園は宣伝も活発であるものの、その陰で、ハイブッシュの発育不振で行き詰まっている園や、廃業した園だってある。

 陰の部分だわな。
オレとしても、他の園で鈴木さんの植え付け指導園が、10年後に枯れ出した事例を見ている。
それを本人に直接連絡したところ、というか、あまりにも数多くの指導園があるから、その植え付け指導だけした園は覚えていなかったけれどもな。
維持管理は所有者がやる。

 そんな話を鈴木さん本人としたところ、本人は何かピンときたものがあったらしく、本人の携帯番号をその場でオレに教えてくれたのだから、これはただごとならぬ事態だ。
個人の携帯番号をその場で教えるかね。
一応知り合いだとしてもね。
でも、シンポジウム会場では、いろんな人から名刺も貰うけど、名刺には携帯番号も書いてあるけどな。

つづく。
2015.7.17 記
作者を誉めるメールを送ってくれえ〜!
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