フェスティバル(T172)台木の優れた点
 ブルーベリーで接ぎ木するなら、フェスティバルという品種が台木として最高!、とオレは考えているよ。
ホームベルも使えるけど、ホームベルはサッカーがたくさん出過ぎ。
地面から生えてくるのをサッカーというが、これを切り除くのが面倒くさくって。

 だから接ぎ木苗を売っている業者では、サッカーが出にくい品種を使っているところもあるくらいだ。
その点、フェスティバルは、サッカー発生数が少ないし、しかも太いものが出る、という利点がある。
太いと接ぎ木しやすいんだ。
しかも、フェスティバルの方がよく伸びるし。
もうちょい、もう少し詳しく補足してみよう。



 そもそもフェスティバルはT172ともいう。
テスト番号172という意味だ。
ブルーベリーの本で、初期に出版された本には、T172がちらほら載っていたりする。
アメリカで交配された試験品種だったが、正式登録はされずじまいだった。

 日本にも導入されて、大関ナーセリーが商品名としてフェスティバルという名前を付けて、15年前の西暦2000年ごろ売っていたことがある。
黒砂糖のような甘い果実ができて、樹は大きく育っていくけれども、予想外なことに果実があまり成らない。
樹ばかり育って、結実性が悪いのが欠点だった。
大関ナーセリーでもその後は販売されなくなってしまった。

 それでも一時はけっこう普及した品種で、他人のブルーベリー園を見に行くと、高さ2mくらいの樹が多い中で、突出して高さ3mにも伸びた列があったりして、それがフェスティバルだったりする。
フェスティバルは幹の太さが5センチくらいにもなる。
ホームベルやティフブルーだったら根元は太さ3、4センチくらいの数本の株分かれ状態だな。

 何が言いたいかというと、ホームベルやティフブルーにハイブッシュブルーベリーを接ぎ木して、年月が経つと、台木の方が細くて、上部の穂木品種の幹の方が太くなる、という台負けの現象がおきたりする。
でも、フェスティバルって幹が太くなる品種だから、台木の太りが間に合わなくなる心配はなさそうだ。

 また、ホームベルやティフブルーは、日本の土質そのままでも一応育つものの、クロロシスといって、枝の先端が黄ばんだり、葉っぱの色素が抜けることが、じつによくある。
酸度不足が原因だ。
台木がクロロシスを起こすと、穂木品種のハイブッシュの葉までクロロシスを起こすありさま。
でもフェスティバルの樹は、もともとクロロシスが出にくいので、あまり心配いらない。

 これら全ての問題は、ブルーベリーは強酸性土壌が原産地で、日本では酸度が強くないために、ブルーベリーの樹勢が弱いことから生じている問題だ。
発育不良ゆえに、台負けだの、葉っぱの黄変だのを引き起こす。
弱った樹は、根元にカミキリムシも侵入しやすいし、第一、植えて成るまで3年だの5年だの年月がかかるよりは、一年でも早く大きく成長してほしいものだ。

 だからブルーベリーの本には、成長を良くするため、ピートモスを与えるということが必ず書かれている。
でもピートモスって、値段が高いからな。
現実には、ついついケチりがち。
そんな高価なピートモスを投入して成長が良くなっても、収穫したブルーベリーを売って、投資した資金を回収できるまでに何年かかることやら。
本読んでもコスト対策はろくに記述されてないが、費用対効果というものも考慮しておかないとな。

 なにしろ、地面にピートモスを埋めて育てると、ハイブッシュブルーベリーは、ピートモスの中『だけしか』根が伸びず、周囲の土質には全く伸びていかない、ということを起こしやすい。

 ハイブッシュブルーベリーの発育の悪さに、何年たっても改善が思わしくなく、しびれを切らして採算無視でピートモスや木材チップをどっさりと根元の上からかぶせると、ブルーベリーの根が地中深く押しやられて、深植えしたのと同じことになりがち。
根の上から大量にかぶせると、休耕田では露骨に欠点がでるね。
ハイブッシュブルーベリーは酸欠に弱いから、またまた発育不良を引き起こす。

 とまあ、ハイブッシュの発育不良にはホトホトうんざりしたので、これらの全ての問題はブルーベリーの弱々しさが主原因だから、ブルーベリー品種中でもっとも旺盛に伸びるフェスティバルを台木に使うことが、根本解決になるとオレは考えているよ。
それに接ぎ木苗の方が、ブルーベリーの粒も大きいし!。



 さて、ラビット台木にハイブッシュ穂木という組み合わせが良いとわかっていても、大問題は、接ぎ木そのものが技術的にもやや難しいうえに、多数やらなきゃならないってこと。
面倒だし、経験も必要だ。
今年2015年は接ぎ木を実際にやってみたので、いくつか新たな情報を述べておこう。

 接ぎ木の箇所が「かぶる」ようにすることについて。
ブルーベリーは接ぎ木して、1、2年はそこから折れてしまいやすい!。
対策として、接ぎ木部分が盛り上がって、連結部を「かぶ」さって覆い尽くすようになれば、折れにくくなる。

写真

 これは、実際にやってみたら、穂木がぐらついてしまいやすくて、図そのままの形で、接ぎ木するのは無理だった。
つまり、このままでは実現できなかった。
スモモとかの果樹だったら、盛り上がりが早いからできるけどさ。
ブルーベリーは幹の太りが遅いから、なかなか覆い尽くしてくれないんだ。
ブルーベリーは、V字型の割り接ぎにして、Vの奥深く差し込まないと、がっちり固定できない。

 これはもうしょうがないとしても、でも、前の年に接ぎ木して、その後に一応癒合したものを、ナイフで削ってカタチよく仕上げるのは、比較的しやすい。
つまり1年たってから、テープを剥がして、癒合の盛り上がりで接合部をうまく覆い尽くすカタチに削り直すのは、比較的容易だ。

あとで写真を入れる

 剪定ハサミで挟んで力を入れて押し切ろうすると、接合部が「パキッ」と外れるので要注意!。
接ぎ木ナイフで削っていくにしても、鋭い刃先で多大な力が加わるゆえに、指先がかなーり危険。
だから、電池式ルーター(模型などを削るための小型ディスクグラインダー)で、接ぎ木した箇所の枯れ木部分を、「ヴィーン!」と金属ヤスリで削っていけばいいとオレは想像している。
まだ試してないけど。



 あと、接ぎ木は、【1株につき1本】にすると、とーっても、はかどることが判明。
接ぎ木しようとするラビットアイブルーベリーの株は、株分かれしてゴチャゴチャあるが、理想的なサッカー1本を残して、他は太枝切りハサミで地表スレスレで切っていく。

写真
長いのが太枝切りハサミ。小さいのは剪定鋏

 接ぎ木するときは、元の株の太い幹にするんじゃなくて、サッカーに接いだ方が、木質も柔らかくてイイ。
元の幹だと堅くて、ナイフで切り込みを入れるのが、すんごく大変なうえに、接ぎ穂が育った後に、強風が吹いたとき接ぎ穂がそこから折れてしまいやすいからだ。
接ぎ木部分から折れることは、ブルーベリーではじつに頻発するので、要注意だ。

 株の太い幹を中心として、サッカーは何本も生えてきているが、元の幹から少し離れた場所の地中から生えてきた適した太さのもの1本を選ぶ。
元の幹に近いと、地中が根だらけなので、添え木を地中に差し込みにくい。
なお、接ぎ木苗は添え木しないと、強風で接ぎ木部分から、へし折られる!。

 割り接ぎのためのナイフで切り込みを入れるとき、ズズーッと下の方まで裂けていってしまいやすいので、地中深くからまっすぐ伸びたサッカーではなく、地下ですぐ分岐などがあって、ずっと下まで裂けていってしまわないサッカーを選ぶ。
理想的な台を選ぶわけだが、1株につき1本だけでも見つかれば済むわけだから、比較的よく見つかる。
無ければ、一年保留して台木を成長させて、来年に接ぐことになる。
台木が成長して充実している方が、むしろ接ぎ木が成功しやすくなるので、一年待っても損というほどでもないわな。

 ともあれ、1本選んで、そこへ接ぐ。
1株につき何本も接いでいると、時間ばかりかかってしょうがない。
ブルーベリーは活着率が悪いというか、接ぎ木失敗もよくあるが、失敗したものは台木の芽を成長させて、来年に接ぐことにする。
1株1本の利点は、なんといっても、株元まわりに黒ビニールマルチをやると雑草が生えなくて、1本だけだと黒ビニルで覆いやすくて作業しやすいことだ。
株立ちで何本も生えていると、地面をビニルで覆うことが、これがかなり難しい。

あとで写真を入れる。タイヤとビニルで積み重ねたもの。

 ところで、接ぎ木失敗して、再び伸び始めた台木は、もとの台木の大きさよりも、再成長のものの方が大きくなる!、というビックリの現象を起こしやすい。
つまり失敗した方がよく伸びる、というなんとも皮肉な現象だ。

 翌年接ぎ木するときは、その一年生の幹に接ぎ木すると、サイズや伸び的にも、ちょうど具合が良くなっている。
台木の発育が過剰なくらいに旺盛な方が、接ぎ木したあとよく伸びるので、逆にいえば、2年生台木に接いで成功しても、その後の発育がなかなか良くならないことが多いので、3年生、4年生のフェスティバルを多数用意しておくことは利点だね。
2015.4.7 記
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