高接ぎしまくれば来年には収穫できるはず
幹をぶった切ったけれど、そこからは新しい芽が出て再生すると判断していた。
が、接ぎ木する断面に、ちょうど良さそうなんだ。
太い幹を切断して接ぎ木することは、今までもったいなくてできなかったけど、今回は偶然とはいえ、ちょうど良さそうな断面が出てる。
ようし、ここに接ぐぞ。
ブルーベリーの太い幹に接ぎ木するコトは、知識そのものは十年以上前からオレは知っていたけど、実際にはやったことがなかった。
今回の件にしても、移植しおわるまで思い付きもしなかったんだから、アタマで知っていても、実際に自分がその場になってみなけりゃ、なかなか実現できることではないさ。
さてさて、穂木の芽が伸び出してきたら接ぎ木できなくなってしまうので、三月中に済ませたい。
というわけで、もう大急ぎだ。
移植の大仕事で疲れていたが、このさいそうもいってられるか!。
まずは穂木を確保しなきゃならん。
お気に入りのスパルタンからやることにしたが、穂木発送の関係で良さそうな枝はすでに切ってしまって無かったので、いかにも日陰になりそうな下枝を穂木に使うことにする。
バチンバチンと、よっしゃ、穂木ゲット!。
お次は、幹の断面への接ぎ木だ。
断面をよく見ると、チップソーでぶった切ったから、これがまあ、ささくれだって割れ込んだりして、ひっでえ切り口!。
我ながらよくもこんなに雑な作業をしたもんだと呆れながらも、ノコギリと剪定ハサミで綺麗に断面を切り直す。
ノコギリだの、穂木の束だの、なにかと持ち運ぶ道具が多いので、あとになってからは雪ソリに道具一式を積んで、それを引っ張って作業することになった。
椅子代わりのケースも積んで、座って接ぎ木したりしたぜ。
いざ、接ぎ木の詳細も述べてみよう。
幹が高さ五十センチから一メートルも残っていて、そこに接ぐことは「高接ぎ」という呼び方になるのだと思う。
幹の断面は、太さ一センチから二センチぐらいが多かった。
今まで二年生苗に接いでいたときは、台木が細かったので割り接ぎにしていたが、今回のように太いと割り接ぎができん。
というか、太さ二センチの幹を真っ二つに切り込んでも、それでは太すぎて固すぎて押し広げることができねえし。
そのため断面のうち、側面寄りに薄く切り込んで、そこに穂木を差し込むことになる。
というか、接ぎ木というのは、本来そういう側面寄りの切り口が当たり前なんだろうけど。
ようし、いざ作業開始。
穂木や台木の断面の乾燥を防ぐ関係で、まずは穂木から始めるのが正当だが、なにしろ、台木の枝のぶった切りで断面が荒れているから、台木を先にせざるをえない。
断面を剪定ハサミで綺麗に切り直したあと、接ぎ木ナイフを断面に当てて、剪定ハサミをハンマー代わりにしてカツンカツンと打ち込む。
ようし、切り込み完了。
次は、穂木だ。
台木に見合った太さの穂木を選びだしてきて、鉛筆を削る要領で、ジリジリ削る。
ほんとは、スパッとまっすぐ切りたいところだが、ブルーベリーの枝は材質が堅い方のようで、スパッと切れん。
鉛筆の先を尖らせるように、チマチマと何度も削り込むやり方でも、まあまあ平らに削れる。
なにしろスパッと豪快に切るのは、以前、左手の指先まで思いっきり切ってしまって、これがまあ痛いのなんのって、懲りたのでな。
何度も枝先を切り直して切り口が少しでこぼこしたって、それじゃ接ぎ木が密着しないという考え方もあろうが、な〜に、挿し木するとカルスが一ミリから二ミリも噴き出しているもんだ。
それを思えば、接ぎ木のときのすき間が少ーし開いてる部分があってもかまわねえだろうよ。
と、オレは考える。
クサビ型に切った穂木は、そのあと、剪定ハサミで十センチほどに切って、穂木をただちに口にくわえる。
くわえるのは、クサビ型の切断面が乾くのを防ぐためで、べつに、舐めてるわけじゃないよ。
はたから見れば、穂木を口に突っ込んで、変人みたいだが。
お次は接ぎ木テープの出番!。
といいたいところだが、台木の断面が太めの場合は、両脇へ二本接ぐので、ふたたび穂木をクサビ型に削る作業を続行だ。
二本目も削り終わったら、これも口にくわえる。
口の両脇に二本も穂木をくわえて、ますます変人か変態っぽくなる。
口にくわえたことで両手が空くので、ここで新兵器メデールの登場だ。
材質的にはセルパラテープというものらしく、化学で使われているらしいのだが、通信販売で「自然の休憩所」から購入しといた。
五〜十センチほどテープを引きちぎって、これを薄く引き延ばしながら、台木と穂木を密着させてテープを巻いていく。
密着のときは、厳密には形成層という緑色の薄い層を一致させるのだが、第一見づらいし、表皮のすぐ下にあるので、台木と穂木の表皮だけ一致させれば大丈夫だ。
で、通信販売でメデールが届くまでは、従来型の接ぎ木テープも使ったが、従来型の接ぎ木テープは最後に縛る作業があって、これがめんどくせえ。
メデールでやると時間が半分以下で済んで、すっごく効率化できる。
というかメデール使うと、従来型接ぎ木テープは巻き付けるのがかったるくて、使う気もなくなってしまうけどな。
穂木をスルドク尖らせる、切断面をピッタリ合わせる、メデールで密着させる、という一連の作業は、けっこう面白味があって、やっていくうちに段々楽しくなる作業だ。
もっとやりたくなって、オレは続々と接ぎ木しまくって、あと二ヵ月の五月下旬ともなればグーンと新芽が伸びていることだろう。
そう思うと気分もよろしい。
2010年4月4日撮影
同じ木を左と右から撮影したもの
ここでブルーベリーならでは注意点というかノウハウもちょいと述べておこう。
五月には強風の日があって、ブルーベリーに接ぎ木してグーンと伸びた枝は、そのとき折られてしまいやすい。
割接ぎよりも、秋に芽接ぎしておいたものはとくに折れやすいようだ。
棒で固定しておくのが一般的だが、それもまた面倒なことだ。
木の最上段の枝に接いだものは特に折れやすいが、木の下方に接いだものは折れにくいし、他の幹に縛れば棒の代わりにもなる。
だから、台木の幹は五十センチから一メートルまでバラバラの高さの方がいいんじゃないか?。
ということは、ラビットアイの幹をかなり残すことになるから、あとでラビットアイの芽が再生してくる。
が、ハイブッシュとは幹の色や落葉が違うので、見分けることはできる。
とくに、ホームベルの新しい枝は「冬でも緑色」をしているので、スパルタンの赤い枝とは明白に見分けることができる。
赤と緑だしな。
フェスティバルと、カロラインブルーやサミットは、休眠枝の色が似ているので、混乱してしまうかもしれないな。
接ぎ木があまり伸びなかったとしても、ブルーベリーの花芽は付きやすいので、一株について接ぎ木を十箇所以上もやれば、その年の夏の収穫は無理でも、来年にはもうかなり収穫できそうだ。
2010.4.17 記
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