観光ブルーベリー園を初開園
 隣の区画のブルーベリー園で、バイトのおばはんが盆の用事ゆえ、十四日は休むという。
じゃあ!、ということで、オレが代わりに店番というか、受け付け係をすることになった。
しかも、その一日だけは、お客さんを入れるのは、オレのブルーベリー畑の区画だけだっ!。
つまり、オレのブルーベリー園が初開園、というわけなんだ。

 ウチではラビットアイがメインなんだが、問題があって、これの熟し始めが遅くてな。
昨年なんか八月二十五日ごろから熟したもんだから、那須高原にお盆の休暇に来ていた観光客の人達は、もうすっかりいなくなっているありさま。
だから昨年は事実上開園できなかった。

 で、今年(二〇〇八年)こそはと、剪定をきっちりやって果実を少なめに成らせた。
こうすることで養分がいきわたるようにして、熟し始めの時期がお盆のころになんとか重なって、少しは間に合った次第。
でもさ、なかなか熟さなくて、お盆に開園できるかどうかは、八月の十日過ぎまでわからなかったんだからさあ。
それでも熟した果実が少ないので、お客さんは十人も入れば、果実は無くなってしまうだろう。

 前日の十三日にバイトのおばはんと受け付け所に同席して観察した限りでは、オレの畑は一日限定の開園ならば、果実の数は間に合いそうだ。
お盆の十三〜十五日のうち、まん中の十四日だけというわけだ。
バイトの雇い主の園主にも連絡しておいて、入園価格やシステムはオレも横並びで同じにした。



 さて、十四日の朝、早起きした。
気合いが入る。
出発して、那須高原のブルーベリー園に到着した。
開園時間よりも二時間ぐらい早く着いた。
事前準備をやっておきたい。

 で、改めて、摘み取り受付所を見回してみると、テーブル周りに土ぼこりが多すぎるのと、モノが散らかっているのと、落ちているゴミが多すぎるのだ。
も〜おっ!、オレはあんまり部屋を清潔にするタイプでもないが、受け付け所のあっちを掃除、こっちを掃除っ、そっちも整理整頓で、大掃除の開始だっ!。

 竹ホウキは置いてあったが地面に置きっぱなしになっていて、ホウキの柄の中から土の塊と白アリが大量に出てきたくらいだ。
全然掃いてないな!。
年期の入った汚れっぷりに、汗だくになって掃除しまくった末に開園時間が迫ってきて、第一号のお客さんがやってきた。

いざ、開園の巻
「計り売りのブルーベリーありますか?」
はかり売り?。
最初、なんのことだかわからなかったが、観光摘み取り園ではあるが、そのお客さんは摘み取りは(あんまり)やりたくなくて、摘んだパック詰めのものを購入したい、という意味のことだった。

 オレの知識としては、このような売買の仕方も観光ブルーベリー園では大変よくあることで、総売上の三〜四割にも達するらしい、ということを知っていた。
でも、あいにく無い、のだ。
昨日(十三日)は、自宅の庭のブルーベリーの木から、果実を摘んでパック詰めしたんだけど、庭の木から全部摘んでしまった上に、昨日(十三日)、受け付け所でおばはんと同席したときにテーブルに並べて、完売してしまっていた。

 というわけで、計り売りの希望のお客さんに対し、「昨日はあったんですが、全部売り切れてしまいまして」と正直に言ったら、お客さんはそのまま帰ってしまった。
う〜。

 パック詰めのブルーベリーを発泡スチロールの箱で冷やして保管しておかなきゃな、とか今後の対策を考えていたら、次のお客さんが来た。
カップルで、さわやかな青年と、可愛い女性で、仲良しの様子。
「売ってるブルーベリーを買っていきたいのですが。」と、ほがらかに青年が言った。

 と、計り売りの品を希望しているような意味あいであった。
ブルーベリーの観光摘み取りが初めてのようで、わからないようでもあったので、自分で摘んで持ち帰るシステムでしてと(半ば誘導的に)説明したところ、ラッキーなことに入園してもらえることになった。
オレにとって、初めての観光摘み取りのお客さんが、さわやかカップルで、じつにありがたいことだ。
感謝!。

 受付所からオレの畑まではやや距離があって、二百メートルくらいはあって歩かねばならないので、案内するといっても不安だ。
ちょっと遠いのでね。

 なんとか耐えられる範囲内のようで、無事到着。
大粒の実がなっている木に案内して、「なるべく大きな実のものを採ってください。できるだけ大きな実の方がよく熟しています」と、オレは説明した。
熟した品種でいえば、ラビットアイ系ブルーベリーのブライトウェルが中心で、次いでフェスティバルだ。



 お客さんにとっては、甘い、大きい、ということが大きな希望条件になる、ということを知っていたので、オレは、大粒をオススメしたのだが、じつは栽培者としてのある事情があった。

 というのは、オレのラビットアイは、まだ果実が未熟のものが多いということが背景にあって、でも、シーズンで最初の果実は、大きな粒になる、というブルーベリーの特性があり、しかもそのような大きな粒は熟すのが早い、という特性があるため、だからオレはお客さんに、「大粒のものを摘むように」と説明したわけだ。

 未熟のものを摘んで、お客さんが味に不満の感想を持つということは、初めて開園したオレにとってはツラ過ぎるので、それはできるだけ避けねばならなかった。
幸いなことに、さわやかなカップルのご両人は、ニッコリ笑い、楽しく摘んで、百グラムパックに山盛りに摘んでいただいた。

 百グラムパックというのは、小振りなパックなのだが、なにしろ果実の供給不足で大型パックにできない事情があって、だから百グラム小振りパックが使われているんだが、でも、すりきり一杯でなく、山盛りにしてもOK!となっている。
だから、こんもり山盛りで限界まで積み上げて、さわやかカップルは、うわーこぼれる!、と、大はしゃぎだ。
オレとしても楽しい。
めでたし、であった。

 幸いなことにお客さんがちょうど入れ代わり立ち代わりで来て、小さなお子さん連れの家族のときは、子供が中心になって、賑やかで楽しい観光摘み取りだ。
超可愛いし、ブルーベリーファンがウチの畑に来る、というだけでもオレとしては楽しいし。
この日は、お盆三連休十三日〜十五日のうちで、真ん中の十四日で、那須高原では一年でもっとも混む日といってもいいだろう。

 「なぜチップのマルチをしているのですか?」と、お客さんからにこやかに言われたが、この質問はブルーベリー栽培でいえば難しい質問を言っているわけではないが、一般の野菜栽培や花卉園芸からいえば、ブルーベリーはやや特殊な栽培の仕方なので、理由から説明するとなると、これは相当難しい質問といえる。

 「この木は何の品種ですか」とか、お客さんが「私もダローとハーバードを栽培しているのですがうまく育たなくて」とか、「ブルーベリーは寒いところが適しているんですか?北海道とか」などなど、栽培者本人のオレとしては、一応わかるのでスラスラと答えておいたが、外部からバイトを雇った場合では、返答に困るんじゃないかと思う。

 と、午後になって終了時間に近い頃に、お客さんと一緒にオレの区域の畑に案内したら、もう熟した果実が残ってなかった。
ヤバい!。
もう、前金で、お金もらっちゃっているし。
あわてて、全部の木を回ったが、おみやげの百グラムパックに山盛りに摘むことができなくなってしまった。

 おわびとして半額返却したうえで、バイトのおばはんの区域に入ってそこで充分味見していただいた。
今日はそこにはお客さんを入れないことになっていたが、足りないときは入れてよい、と園主から聞いていたのでね。
そこは、ハイブッシュの区域で発育不良が多いという事情があった。

 それゆえに熟期が遅れて、(本来なら熟期シーズンに入らない)お盆の時期まで果実が残って、摘み取りとしてお客さんに出すことができる、という事情があった。
お客さんはそれを食べて、「すごい美味しい!」と驚いた様子だった。
とのことで、オレの園はまだまだやや苦戦かな、と思いつつ、本日の初営業を終了したのだった。
2008年8月15日 記
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