さあ、行くんだ
 とりあえず返答については「いない」という意味のことを答えつつも「そういうことは実際の自営の経験がないのでよくわからない」ととぼけて答えた。
オレとしては実際そんな巨額を借りるつもりもあてもないが、そりゃあ、お金はあった方がいいけど、借金して破綻した人にオレは直接会って実際に見てきたばかりだった。

 それに農業の補助金だってタダでもらえるように見えても、貰うと、引越し禁止、転職禁止、植え換え禁止、何とか禁止、と(補助金貰って持ち逃げする奴防止)、こまごまとした禁止事項があって、嫌ならそれまでにもらった補助金全額返却!というものがいちいちチラつくとあっては、だったらそのようなカネにはできるだけ関わらないようにしたいし。

 第一、今までのブルーベリー栽培で問題はいろいろあったけど、草刈りにせよ、発育不良にせよ、お金がありさえすれば解決できるという問題ではなかった。
ブルーベリーの農場は、建物を除けば、農園だけならべつにたいして投資の金はかからないし、今までの自分がそうだったようにあまり金をかけずに作り上げていけると思う。

 オレは、お金を借りなくても、自己資金でやっていけることを強調した。
自己資金といっても、そんなにあるわけじゃないけどさ。
その人がうつむき加減で言った。

 「小さな投資では、小さいことしかできない…」
って。
きつかったなあ、この言葉は。
ハハハ。

参考情報:邱永漢

写真
2007年2月3日撮影
オレと畑と那須の山(こんなカオしとります)

 なんのなんの!。
那須高原でホテルなどの宿泊施設は、レストラン同様の立派な設備や厨房を備えているけど、それは朝夕の食事のためだけで昼間は空いていたりしてるから、オレが宿泊経営者と話をつけて、建物前の空いた農地にブルーベリーを移植して、ブルーベリー摘み取り客が喫茶店同様の豪華な休憩所を使えるようにしてみせる、とオレは無理矢理に意気がって答えてしゃべったが、うーん、目の前の美人にどう思われたかは、オレは自分で考えながらしゃべるのに精一杯でよくわからない。

 そろそろ、帰宅予定の時間になった。
その人は、料理が好きだということだから、摘んだブルーベリーをプレゼントして、前もって調べておいた電車の時刻に間にあうように駅まで送っていった。
その人は駅で別れ際に、オレに向かって、ニッコリと笑顔で笑った。

 オレは、その人に好かれただろうか?。
その美人は列車に乗って去っていき、オレの携帯には数時間後に、お断りのメールが入って、二人で築く生活という夢を見ていたのが、もう破談となって、オレはがっくりきた。
オレは…。

 さあ、行くんだ、その顔を上げて。
新しい風で心を洗って、ダメになってしまった古い夢は置いていこう。
これから始まる新しいドラマのために。
あの人はもう思い出だけど、オレを遠くで見守ってくれている。
そう思うことにしよう。

※最後の文面は、「銀河鉄道999」の歌を真似(パロディ)してみた。
「果樹園起業のお見合い恋愛結婚プレゼンテーション」−終わり−

作者を誉めるメールを送ってくれえ〜!
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