ブルーベリー園の研修バイトに行った
 ブルーベリー園のアルバイトに行ったんだ(というか、一応再就職のつもり)。
樹は大きいし、直売設備もすでにあるんだけど、なんというべきか、管理ほったらかしの大雑草ボウボウで、ゴミが散らかりすぎ!。
キタナすぎるぞ。

 他人の家なら「散らかっているけど」と言われても、入って見れば、とっても整頓されててどこが散らかってるの?キレイじゃんか!といっつも驚くんだけど、というか、そもそもオレは清潔ということには割とドン感な方だけどね。
同世代に比べると清潔感の欠如、というものがオレ自身の悩みであった。

 だが、そんな不潔人間のオレからみても、ここのブルーベリー園はキタナすぎる、と感じた。
とはいえ、ブルーベリー園の求人募集は滅多にないことを思えば、この清掃や管理をするのが仕事なんだと思うことにして、気をとり直してやることにしよう。

写真
この写真は、オレが栽培したブルーベリーで、文中とは関係ありません
品種はウェイマウス(2001年6月9日撮影)

 六月十五日オープン予定日にしては、あと二週間もないので、前の人や経営者は冬の間なにをサボってたんだ、と怒る気分で、慌ただしく作業の開始。
人の背丈ほどもあったセイダカアワダチソウの大群は、別の日に他の人が刈り取ったので、道路沿いに大量にポイ捨てされていたゴミを拾い集めて、店外で雨ざらしのままの業務用のゴミ群も捨てて片付けた。

 もう〜、冷蔵庫の中には去年の食材が入ったままだし、ふきん濡らしたまま昨年から置きっぱなしにすんなよ。
皿やコップはほこりっぽいし、店内は女の人の担当部署だけど、これを今まで変に思っていなかったというのが変だ。
オレは内心怒りながらも、水まわりの清掃して、タオルをどれも洗って、でもこの有り様から、野外トイレの中はどうしても見ることができなかった。
恐ろしくてさあ。

※後日、開園したときに「トイレはどこですか?」とお客の女の人から聞かれたので、どこって尋ねられればそこですけどォ…、お入りになったようですが、この後どうなったかは知らない。

 ものすごーく感じた膨大な不満の数々は、さらに述べるのはとりあえず省略して、楽しみは、やっぱりブルーベリーのつまみ食い。
まだ開園日の前だから、二〇〇二年の初成りはオレが食った。
黄緑色の未熟な果実は、いくつかが青く黒く熟してきたら、急に続々と成熟が始まった。

 うーん、おいちいねえ。
雑草を刈り払って(一回刈って終わりじゃないよ)、せいせいとした園内で、ブルーベリーの果実をつまみ食いすると、とってもおいしい。
ちなみに、ブルーベリーは収穫初めの方が果実が大きいので、従業員特権?で独り占めして食べることができてうれしい。

現実のブルーベリー園の姿から
 ここアルバイト先のブルーベリー園にて、開園時間前にオレが一人占めしてブルーベリーを食べ歩いていると、いろいろな木があることがわかった。
小粒のものや、酸っぱいもの、甘いもの、育ちがいいもの悪いもの。
だが、どの木が最も美味しいかというコトよりも、それ以前の大問題があることにすぐに気がつくことになった。

 成長不良や枯れたブルーベリーの木が大変多いことだ。
白っぽく枯れた枝が、骸骨のような姿をさらしている。
これは、ハイブッシュブルーベリーは暑さに弱いから、夏に枯れこんだのだろう…と、オレはとりあえず推測した。
他の原因としては、根元にコウモリガという幼虫が食って、幹の中を食べ荒らしている被害が多い。

 とはいえ、ハイブッシュにシュートやサッカーと呼ばれる「ひこばえ」が次々に新しく伸びていれば、一応大丈夫になるはずだけど、これらもあまり生えていない。
ほとんどのハイブッシュの株は、シュートやサッカーの発育がとても少なくて、全体的に「ただ生きている」という雰囲気だった。
土質が不十分なんだろう。
ここの園は管理不十分だったから、ハイブッシュの問題点が大きく見えやすい形になったのだとオレなりに考えた。

 枯れたり発育不良なのは、ハイブッシュだけ。
一方、ラビットアイブルーベリーとなると、これは対照的に、大変順調に育っていた。
コウモリガが食おうが、シュートやサッカーのひこばえが次々に育って、これらが元気一杯に全体をカバーして関係なし。

 ハイブッシュブルーベリーの枯れ枝は、とりあえず、切って取り除いておくことにした。
コウモリガのフンが幹から噴出している部分は、穴ぼこの中にキンチョールを噴霧して殺虫しておいた。
それにしても、いったい何本枯れているかわからんぞ。
半枯れのものが多くて、枝の一部分だけ枯れているというのが多い。

このブルーベリーは何?
 まずは被害樹を正確に数えることになった。
半枯れ状態のものは、枯れたか生きているのか判断に迷って、明確に一本二本と数えることができないので、仕方ないから一本ずつ状態をチェックしていこう。
おお、そうだ、ノートに記録とっておこう。

 チェックといいつつ、果実が次々に熟しはじめている時期でもあるので、果実の品質もついでにチェック。
要はブルーベリーの食い放題だ。
甘いもの、大粒のもの、小粒のもの、大粒でも酸っぱいもの、小粒で取るのもめんどくさそうなもの、球形の実のもの、発育不良の木のもの、ほとんど枯れたもの、木の上下で色が違うもの(接ぎ木されているのが判明)、ブルーベリーの株の中から山桜の木が伸びて混生しているもの(トリのフンから芽生えた)、だのいろいろいっぱい。

 木の発育が、まあまあ良ければ◯、半分枯れたなら△、完全にダメになっているなら×、とノートに書いて、熟期についても、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)に三分類してメモする。
果実の粒が、大きいか小さいかもメモする。
品種の名前がわかればいいんだが、木にラベルがない!。

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後でノートの写真を入れる。
枯れた木が過半数を超えるかもと思ったが、数えたら一応二割以内に留まった。
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 仕方ないから、果実の形から品種名を判定しようとしたが、これの判断が難しいのなんのって。
同じ木の果実でも、発育の微妙な個体差によって「あいまいな姿形」のものが混じっていて、文献の品種特性と充分一致させることができないので、このあいまいさがオレの判断を迷わせる。

 似たり寄ったりの大同小異の品種がブルーベリーには多いので、結局のところ迷いに迷って、品種名はひとつも断定できなかった。

有望ハイブッシュ品種み〜っけ
 だが、そんな中でも例外的に、シュートやサッカーの発生がなかなか良いハイブッシュが二本だけあった。
ラビットアイ台の接ぎ木でなく自根だ。
木の育ちがけっこう良いうえに、熟す時期が最も早くて、粒が大きくて、味もウマイ、という四拍子揃った「超優秀系」のハイブッシュの木が二本だけあった。

 コレは有望だぞ!。
他のハイブッシュはシュートやサッカーの発生が少なくて、枝の伸びも発育不調っぽいのが大部分だったから、一般のハイブッシュは通常の土質のままではやっぱり育たないのだろう、とオレは判断した。
つまり、ハイブッシュブルーベリーを順調に育てるなら、酸性の土にしてピートモスや有機物を大量に与える、という一般の園芸書の説明文どうりの事のわけだ。

 といっても、ブルーベリーの苗木を最初植えた時にピートモスやワラを大量に与えても、これらは年々分解して消えていってしまうので、毎年維持するのが大変なのはわかっている。
そういうことをしなくても、普通の土質のままでも結構良く伸びて、しかも早生で大粒、という有望品種が目の前にあるんだから、殖やすならこれが断然イイ!わけだ。

写真
2004年6月13日撮影

 と、気付いたので、この品種をさらに細かくチェックしてみた。
果実は扁平というわけでもないが球形ではなく中間型で、色は明るい青ではなく青黒い方で、株は立性で…。
さらに細かく言えば、冬の一年生枝は赤っぽい色で、八月になっても小粒のがまだ熟して、それを食べるとブリブリした感触でまだけっこううまかった。

 この木は年数が経っているので、ハイブッシュの新品種ではなく、従来の品種のうちの一つであることはわかっている。
この名無しのゴンベエ品種は、スパータンだろう、とオレは最初推測した。
スパータンは、大粒で早生だしな。
が、スパータンは土地の適用範囲が狭くて夏枯れしやすいそうだから、この名無しのゴンベエ品種は枯れ込みがほとんどなかったから、どうやら違うようだ。

 うーむ、そうするとこれは…、ウェイマウスかな?。
ウェイマウスは中粒だと思っていたが、本によっては大粒と書かれているものもあるしな。
土壌適応性があるなどの諸特徴を検討すると、どうやらウェイマウスらしい…かな?。
「らしい」であって推測したが、株が開張性でなく立性なのがヘンで、品種名を断言できないので、まだわからないし、それに責任とらないけどな。

 とりあえず剪定の残り枝を挿し木して、仮の名としてラベルには「ウェイ」としておいた。
正式にウェイマウスとわかれば、あとでラベルの下に、マウスと書き足せば済むからね。
挿し木が根付いて数年後に果実がなれば、そのときにはオレとしても正式の品種名がわかると思う。


【追記】
 後年になってからようやく果実が成ったが、八割方の苗は、ずいぶん小粒な実で、とても遅い時期に熟した。
だが、二割ほどの苗は、大実で早生のものが成った。
さらに数年かけて混迷の末に、ようやくわかったこととして、この品種は接ぎ木されたスパルタンであった。
台木は、バーリントンというハイブッシュ系のもので、これは関東の土でも強勢で根付き、晩生で小粒の品種。

写真
この品種を収穫してショートケーキの箱に詰めたところ
2009年7月14日撮影

 バーリントンは、赤い枝や楕円形の葉っぱがスパルタンと似ているので、台木の枝が地面から伸びて、穂木と一緒に茂ってしまうと、果実の無い時期は、見分けできなくなってしまう。
この状態の母樹から、剪定の枝を挿し木した結果、八割小粒(バーリントン)、二割大粒(スパルタン)の苗が出来上がったわけであった。
ちなみに、この件に関するオレのダメージは大であった〜。

2年後にさらに追記【バーリントン】
2010.12.25 追記
2013.02.06 追記

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