四季成りイチゴの栽培
 子供にも大人気のイチゴ(ストロベリー)の登場だ。
イチゴはうまい。
オレは子供のころから母親がイチゴを買ってくると嬉しかったものだ。
今でも好きだけどな。
つい先日も、イチゴ狩りにわざわざ出かけて、ハラいっぱい食べてきたところだ。

イラスト

 オレは以前に「四季成りイチゴ」というものを、栽培していたんだ。
いったいどのようなものであったのか?。
そして、その「四季成りイチゴ」の栽培はいかに?。
それなりの問題点もあったので、それを含めて述べてみたい。

普通のイチゴの栽培とは
 イチゴは果樹というよりも、栽培面からいえば野菜に近いといえるだろうけど、イチゴはフルーツというか果物扱いになっているから、オレも一応調べていたよ。
イチゴというのは、実が成るのは本来五月ごろ。
元々は、この時期に成るものらしい。
お店ではもっと早い時期から売っているけど、それはハウス栽培もの。
というか、現在では、イチゴというのはハウス栽培が中心になっているみたいだけどな。

 でも、オレの栽培は趣味だから、ハウス栽培というわけにはいかない。
ビニルハウスを簡単に作れるわけではないしな。
趣味で栽培するとすれば、普通は露地植えということになる。
露地植えすれば、収穫は五月ということになる。

 だけどオレが気になったのは、夏や秋はイチゴはどうしているかというと、葉っぱだけの状態なんだぜ。
雑草取りが大変そうだ。
夏になれば雑草がボサボサ生えるだろうけど、でもオレ、草取りというのが苦手なんだ。
真夏の炎天下に畑にしゃがみこんで草取りするのは、とても辛い作業のように思えた。
果樹?、草取りやってねーよ。

 雑草よりも果樹の方が背が高いからで、五十センチ以上に雑草が伸びてしまわない程度には、草刈りをやっているけどな。
でもイチゴみたいに背丈が低い植物で、雑草が五十センチも生い茂ったら日当り不足になってしまう。
それに夏の間にせっかく草取りしても、イチゴが収穫できるのは次の年からで、しかも五月になってからなんだぜ。
それでは先が長すぎると思った。
イチゴというものにオレは興味あるけど、「普通のイチゴ」栽培については、あまり乗り気ではなかったんだ。

当時の事情と、四季成りイチゴ情報
 そうはいっても、当時のオレ個人の事情として、果樹の収穫はまだだったからなあ。
なにしろ、植えた果樹はどれも木が小さいんだ。
果樹は成り出すまでに年月がかかるからね。

 だから収穫できるものは何もなし。
実がなるまでに最低三年はかかりそうだった。
まったくおせーよ、と、ぶつくさ思ったが、なにしろ手間や出費はかかっているので、オレとしてもツライ時期だ。

 それがだ、世の中には、春から秋まで実が成り続けるイチゴ、というものがあることを知ったんだ。
「農耕と園芸」という農業系の雑誌を読んでいたら、新型の四季成りイチゴの紹介がされていた。
一九八六年(昭和六十一年)のことだ。
四季成りイチゴというのは意外と歴史があるらしく、今までにも多くのものがあったらしい。
だから、園芸書にも載っていることがある。

 そのとき紹介されていたのは、新しく開発されたばかりで、名前を「夏芳」(かほう)という四季成りイチゴだった。
この四季成りイチゴ「夏芳」は、五月にも収穫はあるが、六月ごろになると花がまた咲き始める。
そして七月にイチゴの実がなる。
夏にも花が咲き、九〜十月にまた収穫。

 冬以外は、果実が次々に成り続けるという、ウソみたいな話だが、本当の話だ。
そして、この「夏芳」は病虫害に強く豊産型で、特に家庭園芸向き、なんだそうだ。

四季成りイチゴの栽培を決意
 オレはよく考えた結果、果樹収穫の空白期間を埋めるべく、この四季成りイチゴ「夏芳」の栽培をすることにしたんだ。
なにしろ魅力的だ。
オレの果樹が成るまでは、この四季成りイチゴを栽培することにしたわけだ。
暖かい時期なら、次々になりつづけるという点が気に入った。

 ただし、四季成りといっても冬は成らないぜ。
一方、オレが気にしていた「雑草取り」の件だが、四季成りイチゴは「鉢植え」で栽培することにした。
鉢は狭いから、雑草取りはすぐに済むからね。
これくらいなら、オレにもできそうだ。
よーし、いっくぞー!。

苗の購入と初年度の栽培
 雑誌に紹介されていた「夏芳」だが、サカタ園芸のカタログにさっそく載った。
載った年は、一九八七年(昭和六十二年)のことだと思う(多分)。
通信販売で注文して、買うことにした。

 サカタの通信販売では「夏芳」の苗は三株一組だったので、確か郵便為替で送金して、三株購入した。
そして一九八八年(昭和六十三年)の春から、四季成りイチゴ「夏芳」の栽培を本格的に開始したわけだ。
※今では「夏芳」はカタログでは見かけなくなっている。

 そのときはオレは浪人二年目決定の頃で、オレとしてもまさかこうなるとは思っていなかったが、日中ブラブラしながらイチゴの世話をやった記憶がある。
さて、夏から秋にかけて四季成りイチゴは一応実った。
が、意外とそれほど印象的ではなかった。

 なんせ三株ぐらいだと実った数が少ないんだ。
毎日収穫というわけには、とてもいかない。
四季成りイチゴの栽培で、記憶が鮮明なのは大学に入ってからのことだ。

鉢植えで栽培することにした
 一九八九年(平成元年)、近所の大学受験は予想外なことにみな落ちたので、唯一受かった群馬県の私立大学で寮生活を送ることになった。
遠隔地の学生寮であるから、オレが植えた果樹の数々は茨城県の実家にほったらかしだ。
このさい、しょうがねえじゃん。
遠いので、実家にひんぱんに戻ることなんてできやしねえ。
手入れもできず、果樹園芸には縁遠くなってしまったと思えた。

 そこでだ、鉢植え栽培のイチゴが意外と重要な存在になった。
だってさ、寮生活で果物栽培はこれしかできねえじゃねえか。
庭がねえんだし、かといって、いまさら果樹苗を鉢に植えても、実がなるのは卒業してからになっちまう。
イチゴなら一年でなるからね。

 それに普通の果樹は一年に一度の収穫だが、四季成りイチゴなら春・夏・秋に連続して収穫できるからね。
大学一年生のときは栽培しなかったが、二年生のときから四季成りイチゴを栽培することにした。
そのためには、まず四季成りイチゴを実家から持ってこなくてはならない。

つづく

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