フサスグリ(カーランツ、カラント)って何?
 なんだなんだ、「房スグリ」ってよ?。
園芸の本の中で載っていたんで、オレはこういうものが存在することを知ったんだ。
近所にあれば知っていたかもしれないが、今まで見たこともなかったから、オレが知らなくても仕方ねえや。

写真
2006年6月23日撮影

 その「房スグリ」というのは、赤い果実でなかなかキレイそうだ。
そんでもって、果実の味はすっぱいらしいな。
そして肝心の栽培自体は簡単らしい。
しかも樹の面積は一平方メートルぐらいで済むらしい。
おまけに、場所は日陰気味でもいいらしい。
こりゃ、味はともかくとして、なかなか有望そうだ。

 味のことだけは評判はさほど良くねえ、というか、スッパイことがずいぶんと強調されてやんの。
どこに売っているんかいな、と思っとったが、なんだ、果樹カタログに載っているじゃねえか。
ヨーロッパでは人気がとても高いらしいが、でもオレはそんな遠くの土地のことなんかよく知らねえよ。
と、なんだかんだと思いつつも、結局オレは買ってしまっていたよ。

房スグリ情報
 当時のオレはいろんな果樹を植えまくっていたから、六月に成る果樹ということでも植えてみたんだ。
なにしろオレはいろいろ果樹を植えていたが、冬から五月ごろまでは果樹の収穫がほとんどなさそうだった。
だから六月に収穫できるものは、なるべくたくさん欲しかったというわけだ。

 房スグリは栽培簡単とのことだったが、暑いところはダメなんだそうだ。
もともと冷涼地の果樹なんだそうで、ヨーロッパ北部とか北海道あたりが栽培の適地らしい。
フムフム、そうなんかい。
そうはいっても、関東地方でも栽培は大丈夫、ということが本には書かれていた。

 だったら東京や西日本に比べれば茨城県は少々涼しい方だから、暑さの心配はさほどいらねえとオレは思った。
ただし念のため、柿の大木の下の半分日陰のところ、しかも水道がすぐ近くにあって湿っぽい地面のところに植えた。
房スグリの場合、水分補給はとくに重要らしいからな。
でもまあ、あとで知ることになるけど、茨城であっても房スグリにとっては暑かったみたいだけどな。

育ち始めた房スグリ
 買ってきた房スグリの育ちはまあまあ、にょきにょきといってもいいかもしれねえけど、わりと順調に育った。
二年ぐれえで実が成り出すと思っていたけど、成んねえでやんの。
四年目ぐらいだったかねえ〜、成ったのは。
手間とらせんなよ、と文句もいいたくなっちまうべよ。
普通、四年も先のこと考えて面倒みるかよ。

 例えればだな、通信販売やチケットの予約とかは、品物が届いたり公演(乗車とか)までには日数がかかるのは仕方ないかもしれないけどさ、「四、五年たったら品物が届きます。」または「四、五年先に行う公演の予約です」なんて言い出す通信販売会社だのコンサートなんてのは、そんなのあるわけねえよな、普通。
そんな普通じゃねえことをやっているのが「果樹」なんだ。

 収穫は四、五年先。
年とっちまうじゃねえかよ。
オレの人生のなかでも、そんな五年も先のことを考えてやることなんか、めったにねえよ。
しかもそれまでの間は収穫なしで手間ばっかりだ。
なんてこったい!。
房スグリに限った話じゃねえけどよ。

 そんでもって、果樹の本では「三年ぐらいで成り出します」とかの表現をよくやっているでやんの。
その表現はウソじゃねえけど、ホラくせえ表現だな。
だいたいオレの経験じゃ、三年で成りだした果樹なんてのは全体のうちの一部にすぎない。
大部分は成らなかったねえ。
三年で成るのは、肥料、日当たり、植えつけ面積、管理および栽培技術などが最高最良の場合で、しかも果実は数個のみの場合、という条件のうえで、かな。
まあ、なんの果樹にしても五年ぐらい覚悟した方がよさそうだな。

房スグリの初収穫は?
 脱線じみてきたから話を元に戻すが、房スグリは二〜三年では成らなかった。
じつは三年目には少々成ったような気もするが…それは四年目だったかもしれないが、結局、少しばかり果実が成ったって実感がわかんねえよ。

 でも、ま、五年目ぐらいには大量に成った。
ごちゃごちゃとな。
やっぱり、こうでなくちゃいけない。
赤い果実がブドウみたいにぎっしりついて、豊作だ。

 房みたいに実がなるからフサスグリという名前がついたんだろうな。
これくらいにぎっしり成れば、「収穫」という言葉が実感できるし、オレとしてもご機嫌よろしい。
しかもそれからは毎年豊作だ。

赤い果実とすっぺえ味とジャム
 果実はルビーみたいに赤くて美しい、というのは果樹の本でオレは知っていたけど、本当におしゃれな赤さでアカぬけている。

 だけど、美しい時期は一時的であって、六月の高温多湿の時期のせいか、すぐに腐り出してしまうんだ。
痛んでくると、赤い果実は茶色に変色してくる。
こうなったら鑑賞用には無理かもしれねえ、というか茶色じゃ、もう無理だな。
お願いだからもう少し日持ちしてくれえ〜と思うんだけど、熟期は一週間くらいかなあ。
ただのスグリ(グーズベリー)の日持ちの良さとは対照的だ。

 茶色に変色した果実は食えないのは当たり前だが、赤い果実であっても濃い赤になったものは、それを食うと変な味がした。
それは腐敗が始まっている証拠で、ウッ、とするような味だ。
濃い赤といっても、新鮮なものとの色の違いはほんのちょっと、で、見分けが難しかった。
だから果実をまとめて一気に収穫してジュースやジャムにしようとしても、腐った粒が混じってしまいそうで、そして腐った果実はすんごい味がするんで、オレにはとてもじゃないが恐くてできなかった。

 房スグリはぶどうの房みたいに成るけど、房のなかでもどの位置の粒かによって成熟の時期がバラバラ気味なんだ。
極端な房の場合だと、まだ緑色の果実もあれば茶色の粒も混じっているという有り様だ。
だから房ごとまとめて収穫ということがしずらかった。

 まあ、それは極端な房の場合であるから、普通の場合は、赤く熟しはじめたら毎日観察して早めにすばやく収穫すれば、ジャム加工もできるかもしれない。

 房スグリの赤い果実は、じつに美しくて華やかなんだけど、オレはさんざん食ったけど、歯触りはプチっとして、すっぱい果汁がトロッと流れ出してくるんだけど、なんというか、つまり、やっぱりうまくない。
しかし、ジャムに加工すると酸味が効いてウマイらしい。
なお、北欧や北海道だと、腐らずに比較的日持ちがするらしい。

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