五月はサクランボの収穫
 春のあけぼのの中、冬があけたらさっそくなにかは収穫したいもんだ。
とオレは考えるけど、春は山菜というか、野菜の方がやはり早い。
果物で比較的早いのは、サクランボだろうな。

 実際、オレの場合だと、年が明けてから収穫が一番早いのはサクランボなんだ。
しかも、いくつかの注意点を押さえておけば、比較的簡単に収穫できることがわかったんだ。

イラスト

暖地桜桃とは
 サクランボは、オレの地域ではあまり植えられていない果樹なんだ。
そのため、オレはサクランボに一種の願望みたいなものがある。
で、今植えてあるんだ。
「暖地桜桃」(だんちおうとう)という種類で、普通のサクランボとはちょっと違っているんだけどな。
ある事情があるので、あとで説明しよう。

 サクランボが、現実に自分の庭で実がなり始める様子は、感動ものだよ。
赤く色づいて、明日かな、三日後かな、と眺めているうちに、朝、見に行くともう急激に赤くなっているんだ。
スーパーマーケットでしか見られなかったサクランボが、現実に目の前にぶらさがっているんだ。

 こういうのを見ると、不釣り合いな場所での意外さに、オレなんかなおさら感動したりして、一個や二個だの少しばかりを収穫するのにさえ緊張してしまう。
子供がいる家庭だったらサクランボの成っている風景は、ぜひとも見せておきたい光景だ。

 で、サクランボの実を取って、おそるおそるかじってみると、これが一応サクランボらしい味がするんだ。
「暖地桜桃」の外観や粒のサイズはお店のサクランボほど立派なわけではないけど、家庭用としてはオレは暖地桜桃で十分だと思う。
なぜなら、スーパーマーケットで売られている「サクランボ」というのは、意外なくらいに栽培が難しいことがわかったからなんだ。

普通のサクランボは難しい
 時間を追って、事実を中心に述べてみよう。
オレがサクランボの木に関わった最初は、弟が卒業記念でサクランボの苗を買ったときだ。
正式な名前はわからないが、暖地桜桃でないことは確かだ。

 名前不明のサクランボは、植えて三年ぐらいは、これがじつによく育った。
ぐんぐん伸びて、二メートルを超え、三メートルぐらいまで伸びた。
近いうちに花が咲くかなあ、と思っていたら、夏ごろに葉っぱがなんだか元気がなくなり、木の繁りがなんだかスカスカしたものになった。
コガネムシが盛んに葉っぱを食べていたような気がするが、よく覚えていない。
次の年には、葉っぱがまばらになって、花はなし。
樹の発育も不調だった。

 このサクランボの木、植えてから四〜五年以後は急激に発育不調に陥ってしまった。
結局切ってしまったので、今はない。
サクランボの収穫数はゼロ、だ。

 栽培がヘタだったためだろうと思っていたら、本をいろいろ読んだところ、同じような症状になったサクランボの記述をいくつも見つけた。
愛知県での栽培の話では、木は大きく育ったが、実はならなかったとのこと。
ニフティーの園芸フォーラムでも調べたが、実がならない内容が多かった。
サクランボの樹だけならば、よく育つみたいだけど、とにかく果実が成らない。
幼果が少々付いても、熟さないで落ちてしまう、という記述などが目立った。

 オレは、他にもいろいろ調べたんだが、どうやら「普通」のサクランボは栽培困難らしいんだ。
寒冷地以外の土地では、とくに温暖地では甚だしく結実不良を起こすらしい。

暖地桜桃なら栽培容易
 だが、「普通」じゃないサクランボに限っては、たくさん収穫した話が数多くあった。
「普通」じゃないサクランボって何かというと、園芸店で「暖地桜桃」という名称で売られているサクランボだ。
これなら十分収穫が可能なことがわかった。

 この暖地桜桃は家庭栽培用として良いらしく、近年は園芸店などでよく見かけるようになってきた。
四月ごろだったら、青いサクランボ付きで鉢植えで売られているくらいだ。
で、その鉢植えを買ってくると、一ヵ月後にはサクランボの収穫ができるという手軽さなんだ。
その後は、露地植えにしてもよく育つし、庭植えでもよく実がなるというスゴさだ。
この暖地桜桃、じつによく成りやすいみたいなんだ。
近所でも、たくさん実がなっている枝を見せてもらったことがある(一九九七年のこと)。

 「暖地」という変な名前のサクランボだが、これは暖かい土地においても結実が良いものから通称として名付けられたらしい。
本来の名前は、中国支那ザクラだったか、清州桜桃だったか、正式な名前は覚えていないというかオレはわからないが、「普通」のサクランボとは大分違う系統のサクランボだ。
だが幸いなことに、味はよく似ているし、形もサクランボそのまんま。

補足
「普通」のサクランボとは、分類では甘果桜桃というもので、お店でパックで売られているのはこれだ。
本の分類では甘果桜桃に対し、酸果桜桃というものもある。
酸果桜桃は甘果桜桃よりも育てやすい、と本に載っていたのでオレは植えたが、あまり育たなかった。
酸果桜桃の収穫ゼロ。
甘果桜桃も酸果桜桃も主にヨーロッパで改良が行われたらしい。

 一方、暖地桜桃は中国産の果樹らしい。
果樹の本には、ちょっとオマケ程度に紹介されているのを見たことがある。
よく、わからんけどな。
品質的には、甘果桜桃が最も良いらしく、暖地桜桃は商業流通には無理のようだ。

暖地桜桃の栽培
 オレは、今はこの「暖地桜桃」をメインに栽培しているんだ。
わりと簡単に実をつけてくれるのでありがたい。
が、失敗といえば昨年以前までは、畑に植えた暖地桜桃の果実のほとんどを、鳥に食われてしまったことだろうなあ。
いや、鳥ではなくて、アリかもしれない。
柄とタネしか残っていなかったからな。

 一九九八年の収穫はどうかというと、初代の暖地桜桃は樹が弱ってしまい切ってしまったので、今は二代目を植えてあるんだ。
だけど、この二代目、なにしろ一年前の一九九七年に買ってきたばかりで樹が小さいので、一九九八年はほとんど実が成らなかった。
でも、一個だけ収穫できた。
一九九八年五月十七日のことで、熟し具合からいえば、ちと早かったけどな。
サクランボの味がして、うまかった。

 あっ、そうそう、極めて大事な注意点として暖地桜桃のサクランボは、雨にあたるとすぐ裂果してしまうんだ。
サクランボは、雨にあたると裂果するものが多いらしいね。
だから対策としては、オレは樹に透明な傘でもかぶせようかと思っているんだ。
または、鉢植えのものを追加購入しようと考えているところだ。
鉢植えなら雨を避けることもできるし、鳥、アリなどに食べられないようにすることもできるからね。

サクランボが成った
 なんとか栽培に成功したところだ。

写真
色付いたサクランボ 1999年5月15日撮影

 早採りすると味が苦いことと、完熟の期間はとても短いので、タイミングが必要だ。
それと、どうしたわけか、サクランボは鳥に大変狙われやすいようた。
網をかぶせて防いだり、そのうえ、雨で裂果することもあるので、結構手間ひまがかかる。

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