乗用芝刈機、雑草原を駆ける
 ハンマーナイフモアを牽引乗用式に改造して、大変便利なのでひんぱんに使ってきたんだがな。
改造車なので安全性に問題ありというか、パッと手を離しても機械は止まらずに動き続けるという危険性があって、もし傾斜面でうっかりハンマーナイフモア本体が落ちれば、後部に乗っているオレまで引きずられて落ちてしまう。

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写真後方の枯れ草が繁っている所は傾斜地で、横転すると危険なので刈ってない

 後輪に足を巻き込まれても、ハンマーナイフモアは止まらずに突き進んでしまうから、大ケガになりそうで、すんごく危ないところがある。
また、イスにサスペンションなどのクッションが無いので、長いこと乗り続けていると、腰が痛い!。
そんなわけで、いずれは正式な乗用式を買ってみたいと、検討していた。

 すぐに買わなかったのは、すごくお金がかかるし、置き場所の物置きも必要だし、果樹園の土地を平らにしておくとか(地面がでこぼこだと走りづらい)、石を拾っておくとか(跳ね飛ばして危険で、刃も痛む)、草刈りの性能がわからないとか、いろんな事情で長いこと保留していた。



 そのような中、ブルーベリー畑の面積が増えるにつれて、雑草が多くて間に合わなくなってきた。
雑草で覆われて、小さな苗木が枯れたり、発育不良のままのものが続出してきた。
こりゃあ、緊急事態でなんとかするしかない!。

 パパッとさっさと全面草刈りを済ませたかったので、半ば強引な見切り発車で、このたび、二〇〇六年七月、ついに乗用芝刈機を購入だ。
これで、スピードを出して素早くやってしまおうという計画だ。

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軽トラックの荷台には、ブリッジを架け渡して乗せるが、そのとき乗用芝刈機の腹
をこすってしまうので、乗せづらい。                    
ピンを六本外せば、簡単に刈りカバーを外せるようだが、まだ外したことがない。

 おっと、その前に乗用芝刈機をうまく活躍させるために、前もっていろんな準備を済ませておく必要があった。
置き場所についてだが、自宅の物置きはすでに一杯だったので、数カ月前に買っておいた中古コンテナを畑に設置しておいた。
元は軽トラック用のコンテナで、このコンテナは高さがかなり高いというちょっと特殊サイズだったので、乗用芝刈機がうまく格納できた。

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椅子から降りると安全装置が働いて動かなくなるので、乗ったままコン 
テナに出入りする必要上、コンテナの背がかなり高いおかげで助かった。



 畑の地面は、二〇〇六年の一〜三月ごろの冬期の間に、地面の凹んだところは土を運んできて埋めて、小石も拾っておいた。
元が水田なのに、石がよく出てくるので、いちいち拾っては、小石は土の農道の水たまり埋めに使い、デカすぎるのは斜面に石垣を作るのに転用した。
でかい石は重たくて、持ち上げて運べないので、雪ソリに乗せて、よくひっぱって運んだもんだ。

 あと、もっとも重要な問題として、手押しの芝刈機を以前に買って使っていたんだが、これで雑草を刈ると、芝刈機の底面に、草のカスが、草モチ状というか、おはぎ状態というか、それがべったりと刃の周囲のカバー内面にくっついて、刃が回らなくなってくる、という大問題があった。
これは、乗用芝刈機になってもあまり改善されていないように思えたので、心配だった。

写真
これで芝を刈るのはいいが、雑草を刈ると、刈った草の収納袋はすぐに一
杯になるし、赤いカバーの内側にべったりと草のカスが付着してしまう。

乗用芝刈機まえへ進め!
 ジョイフル本田という、日本最大級の巨大ホームセンターが北関東にあって、そこの農機具売り場にあるのが輸入品の乗用芝刈機だ。
金額もでかくて、十八万四千円なり。
ホームセンターの商品では、もっとも高価な商品のうちの一つだろうけど、でも、乗用芝刈機は本来五十万〜百万円もするすっごく高価な機械なので、十八万四千円というのは破格値の安さなんだそうだ。

 ついでにいえば、アメリカにはよくあるモノだけど日本には全く見かけないモノというものが、乗用芝刈機なんだそうだ。
まあ、オレ個人にとっては、とても高額なものであるが。

 さあ!、ごちゃごちゃした問題は一応なんとか片付けて、いよいよスタートだ!。
乗用芝刈機まえへ進め!。
エンジンがうなる。
セルモーター起動なので、ハンマーナイフモアの手動でエンジンをかけるのと違って、すぐに発車できる。

 高原にドドドッとエンジンの爆音がひびく。
この乗用芝刈機は、元は家庭用製品のため、百デシベル以下の防音対策がしてある。
農機具のエンジンはマフラーが付いてても、ウルサイのが多いのでありがたい。

 まずは、レースだ、サーキットだ。
スタート!。
突進を開始した。

果樹園サーキットの狼
 最大速度は時速五〜十キロぐらいか、でも、ハンマーナイフモアの最大時速五キロとくらべれば、早めだ。
そもそも、乗用のレーシングカートと比べれば、時速十キロなんて遅すぎるが、なにしろ、苗木スレスレを走り抜けて、端までくれば百八十度ターンという急旋回を繰り返さなくてはならないので、けっこう早く感じる。


 なかなかいいぞ。
いよいよ、草刈り機能開始だ。
ズバババッと、草を排出口から噴出させながら、マシンは進む。
おお、この調子で、いけ。

写真
草刈りというよりは、乗って半ば遊んでいるようなカンジ

 園内を周回する。
一周、二周、走るコースは草刈りの関係上、毎回コースを少しずつずらしていくので、タイム短縮というものは測りづらい。
ズバババッという音が、ズゴゴゴッという変な音に変わって、ゴルゴルゴルと、詰まった音に変わってしまって、ああ、これは草跳ね防止カバーの内部に、草モチ状のカスが大量に付着した状態だ。

 芝と違って、雑草というものは水分が多すぎるせいか、細かいカスが水分によってカバー内部に付着して、それがだんだんと付着して肥大していき、ついには、回転刃に触れるくらいにまで、大量にくっつくようになる。
刈る雑草が空間が狭すぎるためにうまく切れなくなり、回転刃もうまく回転できなくなって切れなくなってしまうのだ。

 朝の露がついている時間とか、雨上がりのときは、とくにひどくなる。
しかたないから、一時中断して、エンジンを止めてから、機械の腹の下に手をつっこんで、ゴミをかき出す始末。
手や腕がすごく汚れるので、考えた末に、マゴの手を買ってきて、あの、背中をボリボリかくときに使う五十センチほどの棒だ。
これで機械の腹をかいてやる。

写真
写真の右上に写っているのが、マゴの手

 この乗用芝刈機のカオは、なんだかカエルみたいだというのがオレの初印象だったが、畑の草刈りをして三十分ごとにいちいち停めて、マゴの手で腹の下をかいてやる様は、なにやらギャグの世界のような気もしてくる。
マゴの手で草カスをかきとっても、うまくきれいには掻き取れないという問題があり、もっと簡単にキレイにしたい。

 どうする?。
このままじゃ、ひょっとしたら、買ったばかりの乗用芝刈機、使えなくなってしまうぞ。
雑草だから水分が多めで付着しやすいわけで、本来の芝なら、草の水分が少なくて付着しない、ということもある。

 オレの畑は芝じゃなくて、単に雑草を短く刈り詰めただけなのでなー。
うーん、炊飯器内側のようにテフロン加工とかフッ素樹脂処理とかしてあれば、付着しにくいのだが、してないようだし、草カバー内部に一度オイルを塗りたくったこともあるが効果イマイチだった。



 他社製品の乗用草刈機を見にいったところ、乗用芝刈機と乗用草刈機は、とてもよく似た機械だが、違いがあって、乗用草刈機は、刃とカバーの間が十センチから二十センチも間隔が空いていた。
こんなに空いていれば、草カスがカバーに付着していっても、刃とは触れたり干渉しないから、うまく回り続けて雑草を刈れるわけだ。

 乗用芝刈機は五センチくらいしか間隔が空いていない。
うーん、でも、オレが買った乗用芝刈機は、乗用草刈機よりもずっと格安なおかげで買えたわけだし…。
どうする?。

 工場の製作現場によくある機具として、コンプレッサのエアーというか、高圧の空気があって、これで、機械を動かしたり(電動の工具よりも軽量で、感電の危険性もない長所がある)、エアーダスターといって、シュッと吹き付けてゴミを吹き飛ばしたりしたりするのだが、これを使うと、付着したゴミの掃除がすごく簡単だ。

 大変便利なので、オレもホームセンターで一万円の安いコンプレッサーを買ってきて、チェンソーの刃などはブラシよりもコンプレッサーを使った方が綺麗になるので、よくシュッーと吹き付けて掃除して使っている。
この高圧空気で乗用芝刈機のカバー内部を掃除しようと思ったが、畑にはあいにく電気はないので動かせない。

 ホームセンターを見て回っていたら、エンジン式コンプレッサーというものがあって、約十一万円なり。
高い・・・。
と思いつつも、エアー剪定挟とのセット商品があった。
これは枝の剪定をしていると、腱鞘炎になることがあるのでエアーの力で挟を動かす製品があるわけだ。
近い将来、オレは剪定で何百本も手入れすることになるかもしれないし…。

写真
本体のフレームの鉄パイプを太くして、それを 
エアタンク部分にするというかなり独特な製品。

 よく考えてみた。
乗用芝刈機は、購入予算を三十万円準備して、約二十万円で間に合ったのでお釣りは生活費にあてたいところだが、エンジン式コンプレッサーの価格を合計すれば一応当初見積りどうりになるけど…。
あーもう(高価だから)泣きたい思いで、このエンジン式コンプレッサーを購入した。



 これでどうだ?。
ロングノズルを付けて、乗用芝刈機のカバー内部に吹き付けると、ブシューッと、なかなかの早さでゴミが取れた。
園内を多少走ってはいちいちピットインしては、コンプレッサーで草カス取り整備だ。

写真
エアーダスターで清掃中。背後は、芝生のよ
うに見えるが、雑草を短く刈り詰めただけ。

 マゴの手よりもずっとキレイにゴミが掻き取れる。
カバー内部にべったりと厚さ三〜五センチも肥大して、草カスゴミが付着していたが、高圧エアーを使ってきれいさっぱり取り除くことができたので、これでようやく、乗用芝刈機をうまく活用することができるようになった。

 あと、乗用芝刈機はハンマーナイフモアよりも、草刈りの仕上げが抜群に綺麗だ。
刈り取った草を、カバー内部から外部に吹き飛ばすので、刈り草はふんわりと着地して、上品にキレイな仕上がりだ。

 ハンマーナイフモアだと一メートルもの雑草でも粉砕してキレイさっぱりに進むすんごい能力があるが、乗用芝刈機はそこまではできなくて、草刈り後の再生してきた十〜二十センチの草を刈るのには適している。
そんな短い草には、ハンマーナイフモアにはオーバーパワーなんで、でも、観光園のお客さん用には五センチぐらいに短くひんぱんに刈っておきたいし。

 三十センチの草だと、乗用芝刈機では草丈が大きすぎて、刈りきれずに詰まってしまうので、最初おおざっぱに刈ってから、そのあとでさらにもう一度短く刈るという、二度刈りしなくちゃならない。

イラスト


 オレは、四方八方から周囲を刈り取れるようにして、苗木を植えておいたから、これは欠点としては一度で刈り終わらずに二度、三度と、走らせなければ草刈りが完全に終わらないという予想外の問題点があったが、乗用芝刈機の二度刈りにはちょうど良い。



 おっと、重要な要点があった。
ブルーベリーの植え方では、普通、根元にマルチといって、杉皮だのワラを敷き詰めておくやり方が推奨されている。
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 これをやると、効能のひとつとして、根元の雑草を防げるということが書いてあったりするが、オレの経験から言って、とんでもない!、かぶせておいても、草はすごく生えてくる!。
厳密にいえば、草は一応生えづらいが、それでもなかにはマルチ層を突き抜けて伸びた草があって、その草が大きく育ってしまうのだ。

 手で根元の草を取ったりしていると、腰が痛いし、とってもとってもまた生えてくる。
地面を高畝にしたり、マルチで盛り上げたりしていると、乗用芝刈機にはその凸凹が不便で走りづらくなって、苗木の根元の草をうまく刈ることができないんだ。

 樹が大きくなれば、根元は日陰になって、雑草はあまり生えなくなってくるけどな。
とはいえ、オレの苗木はまだ小さくて雑草に負けやすいので、植え直したよ、こんなふうに。
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 地面を浅く掘って、ピートモスなどの用土を入れた。
つまり、ブルーベリーの根元を周囲の地表と同じ高さにしたわけだ。
こうすることで、乗用芝刈機を木のすぐそばまで寄せて、根元の雑草を刈り取れるようにした、というわけだ。

 根元をタイヤで踏み固めるのはよくないが、それよりも、雑草がブルーベリー苗木を上回って日陰にしてしまうと、ブルーベリーの苗木は日照不足でてきめんに発育不良になってしまうので(雑草との競合に弱いらしい)、作業にあまり時間を割けないオレとしては仕方がない。

 それでも株の横枝が張り出して、苗の幹の周囲十センチぐらいは、どうしても刈り取れないが、その他の周囲を刈り取って雑草を少なくしたおかげで、根元の草取りは大分ラクになった。



 格納庫の扉を開いて、「行きます!」マシンを発進させる。
乗用芝刈機、前へ!。
草原に向かって突進を開始した。
ブルーベリーの苗木スレスレを走り抜け、カーブのコーナリングをうまく百八十度ターンさせる。

 ギヤチェンジはマニュアルで、また変速操作はスムーズではないため、最大速のまま草刈りして走らせていると、その先のカーブでもギヤを変えないまま(つまり速度を落とさないまま)ターンした方がラクなので、かなりのスピードで旋回するわけだ。

 ちょっと難しい。
というか、回りきれなかったときは、ブルーベリーの小さな苗木をもろに刈り取ってしまう!。
旋回半径は二・五メートルくらいかな。

 走らせていると面白いので、畑の端の方だのは、ターンのために苗木を植えないようにしてあるが、一部ジャマなのがあって、本来は苗木のための草刈りマシンなのだが、草刈りマシンをうまく走らせるために苗木をどかして植え替える、という具合に本末転倒になりつつある、というのが今の状況だ。
なにしろ乗っててオモシロイ。
とまあ、こんなところだ。
2006.9.18 記
作者を誉めるメールを送ってくれえ〜!
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