秋の風物はクリ
 オレがいろいろな果樹を植えている畑は、もともとはクリ園だったんだ。
今ではクリの木は一本も無いけど、記憶をたどって、これから述べてみよう。
まずは、クリに関する幼い記憶からだ。

 秋になると親がクリを拾ってきて、お湯で煮て、ドサッとテーブルの上に出された。
これがかなりの量で、果物ナイフを渡されて、自分で皮を剥いて食べるわけだ。
クリはゆでられているから柔らかくなっていたが、この皮を剥く作業が大変だったっけ。

写真
親戚からもらったクリ 2000年10月4日撮影

 でも、味はうまくて満足だった。
クリの量はた〜くさんあったので、しばらくは食べ続けることができた。
というわけで、オレは幼いころから「普通の日本のクリ」は、たらふく食べてきたから、とくに興味もなかったくらいだ。

 一方、天津(てんしん)甘栗はめったに食えなかったから、これにはちょっと興味があった。
オレがその後、果樹に興味を持つようになってから、本で調べたところ、天津甘栗というのは、日本では気候的に合わなくて、育てにくいんだそうだ。
現に苗木はほとんど全く売られていないから、天津甘栗の栽培は日本では無理なんだろう。

クリ栽培のお勉強
 日本の栽培クリといえば、日本原産の品種改良されたクリが中心で、この日本製?のクリを栽培するのが一般的だ。
「筑波」「丹沢」「銀寄(ぎんよせ)」などが代表的な品種だ。
植えるときは受粉のため、これらの中から二品種以上を一緒に植えなければ成らないそうだ。

 そのうえ、クリというのは、果樹のなかでは木がもっとも大きくなるようだ。
かつて畑のクリの木の面積を測ったら、成木で平均して直径八メートルぐらいもあった。
だから、クリを「庭」に植えるとなると、木のでかさが問題になるようだ。

 庭がクリの枝で占有されそうだ。
切り詰めればなんとかなるか?。
無理だね、そんなことは。(きっぱり)。
果樹の多くは、枝を切り詰めると実が成らなくなるものが多いからね。

 切り詰めても収穫皆無にはならないと思うが、でも、オレはそんな毎年切り詰めるような手間がかかる栽培はしたくねーな。
近所のクリ園では、実際には四〜五メートルぐらいの間隔が多かったが、なにはともあれ、クリというのはと〜っても広い場所が必要な果樹のようだ。

 植えたら、あとは、放っておけばいい。
というか、クリは粗放・放任栽培が最もしやすい果樹らしい。
成長も大変早くて、一年で五十センチぐらい枝が伸びた。

 果実が成り出すまでの年月も、桃栗三年という言葉があるくらいで、とても早かったっけなー。
そして、落ちたクリを拾うだけ、というラクチンぶりだ。
わが家の栽培では、クリの作業といえば、まさしく「収穫だけ」だった。

クリ花粉情報
 開花・受粉は毎年おこなわれるが、その時期は六月ごろだ。
受粉は虫じゃなくて、風によって行われるというのが、ちょっと変わっている。
スギも風で花粉が飛ぶんだっけな。
※ハチミツの種類で、クリの花のものがあり、虫媒でもあるらしい。

 だが、クリの花粉というか花では、これがちょっと問題?がある。
アレルギーとかじゃなくて、本によると「クリの花は異臭がする」とよく書いてあって、ニオイが問題になることがあるらしい。
クリの果樹本では、わりとよく書かれている事柄なんだが、いったいどんなニオイなんだあ〜?。

 生臭いとか、むせかえるとか、大抵の本では、どれもこれもが遠回しの表現ばっかりだが、ごくごく一部の本の表現によると「男性のものに似ている」とあった。
男性のモノ?、はて?。
遠回しの表現は、わかりづれーな。
つまりオトコの精液の臭いに似ているとのことで、そうかなあ〜、まあ〜、言われてみれば、似ているような気がする。

 だから家庭の庭に、クリを植えるのはどうか、という考え方もあるくらいだ。
臭うから、っつ〜わけだ。
さて、以前にオレが住んでいたアパートは、窓のすぐ外がクリ園だった。
距離はたったの数メートルだ。

 だから、六月ごろは、かなりの臭いであった。
雨の日は、とくに強烈だった。
が、ニオイの中で暮らしていると感じなくなってくるのか、気にしない場合というか、人によっては全く気にならないようで、たいして話題にも問題にもならず、つまり意外とどうでもよいことであった。

トゲトゲしいイガ
 収穫は九月ごろだ。
ウニみたいな外観の「イガ」が出来て、木から落ちてくる。
このイガの中に、クリの実が入っているわけだ。
イガはトゲだらけで、チクチクしていて、当然ながらとっても痛い。

 頭に落ちたりしたら、めちゃくちゃ痛そうだ。
鋭いトゲで痛くてたまらんので、トゲを避けて中身のクリを取るためには、そのままでは手が使えないため、ちょっとしたコツがあった。

写真
2002年9月25日撮影

 まず、地面に落ちているイガを見つけたら、両方の足というか両方の靴底を利用して、イガの中身を押し開くようにして、イガを踏んづける。
踏むことで、トゲを横向きにするわけだ。

 で、押し開いたイガから、木の棒などを使って、クリを取り出すというわけだ。
転がり出てきたクリは、これは手で拾ってしまえばいい。
これで、いっちょあがりというわけだ。

 ただし、運動靴を履いたまま踏んづけると、トゲが靴の側面(布地)を突き抜けて痛かった。
長靴をいつも履いていたわけではなかったしよ。
結果的に、トゲに触れてしまう機会はいろいろあって、そのため気持ちまでトゲトゲしくなってくるということもあった(ような気がする)。

クリムシの被害大
 クリ栽培で大きな問題は、害虫の被害が多いことだ。
クリムシと呼んでいたが(そのまんまだ)、クリシギゾウムシと言うんだったか、その幼虫だ。
クリの皮をナイフで取り除くと、中からゆであがったイモムシが出てくるありさまで、クリをむくたびに続々と見つかるので、甚だ困ったちゃんであった。

 収穫したクリの半分くらいは、虫食いだったような気がする。
このクリ虫の防除対策だが、専門書によると、収穫したらすぐに密閉した容器に入れて、ガスで殺虫するらしい。
家庭用では、一晩ほど水に漬ける、だったかな。
殺虫せずに放っておくと、収穫したクリの実の中で、幼虫がさらに育ってしまうからね。

 だから、幼虫が小さいうちに(と言ってもすでに大きく育ったクリ虫もいるが)、収穫直後にただちに殺虫するわけだ。
でも、水に漬けるにしても、重いし、めんどくさいことだ。
うちでも、親戚でも、近所でも、収穫したら袋に入れたままほったらかしの場合が多かった。

 だから、クリ虫がうじゃうじゃ。
このクリ虫が入っている割合は、年々増えていった感じがあって、だからオレんちではクリの木を伐採してもいいと親が了解したわけだ。
クリの木を切って、オレが新たな果樹をいろいろ植えたが、そのときクリの苗木も二本新しく植えてみた。

 クリの成長はすこぶる早く、初収穫も三年ぐらいで採れた。
が、とれた実は全て虫が入ってしまって、全然ダメだった。
クリの跡地に再びクリを植えたから、連作障害で被害が大きくなったみたいだ。
過密植とか木が古くなってくるとクリ虫の被害が多くなるようで、古いクリ園では特に被害が増えるらしい。

将来のクリ栽培
 クリは実が成り出すのがとても早いので、広い土地で果樹栽培ができるようになったときは、最初にクリを植えようと思っているところだ。
クリ虫の被害には困っているんだが、クリの「丹沢」という品種は早生(わせ)で、クリ虫の被害が少ないので、丹沢を多めに植えておこうと思っている。

 なぜ被害が少ないかというと、収穫時期が早いとクリ虫の幼虫がまだ小さくて、果実をあまり食っていないからだ。
丹沢は九月上旬に収穫で、常温では日持ちしないようなので、早めに収穫してゆでるか冷凍にして保存しておこうと思っている。
あと、天津甘栗というか「甘栗」もオレはいずれ栽培したいと思っているところだ。

 新しい甘栗品種が発表されたので(四万十甘栗)、将来は栽培できると思う。
ただし!、果樹の新品種は、最初の評判は良くても竜頭蛇尾となってしまうことが多いので、充分注意するつもりだ。
オレはかつて新品種に飛び付いて、手痛い目にあったことがあるからだけどさ。

 日本グリは、天津甘栗よりも渋皮が剥きにくいが、ある調理方法をやれば日本グリでも比較的に剥きやすくなるらしい。
その方法は知らないけど(忘れた)。
調理に関しては、オレはどうも急に知識が乏しくなってしまうので、ご勘弁を。

※渋皮付きのまま「油で揚げる」とウマイらしいが、まだ試していない。

クリのイガを手でつかむ方法
 他の農園での話だけど、「クリ拾いやっといてくれると助かる」と知人のおじいさんが言うので、そんなに大変かなと思いつつ、そのおじいさんが作業を始めたので、オレも手伝うことにする。
クリってイガがあって痛いけど、オレはとっておきの技術として、地面に落ちたイガを靴で踏んで、押し広げて取り出すといいですよ、と披露する。

 と、説明したものの、そのおじいさんはべつに感心した様子でもない。
というのはだ、そのおじいさんは、厚手のゴム手袋をはめて、それで拾ってしまうからだった。
ホイホイホイ、と圧倒的な早さで拾ってしまうのだ。

写真
イガから取り出したばかりのクリは、光沢があって綺麗だ。
時間が経つとツヤ消しみたいな色になってしまう
2002年9月25日撮影

 なるほどっ!。
そうすれば、イガのトゲが手に刺さらないわけだ。
ゴム手袋してクリ拾いすればいいわけね。
作業が断然早い。

 オレも手袋を買ってきて、はめてみる。
刺突防止用のゴム手袋というものが世の中にはあって、これでイガをむんずとつかめば、こね回すようにゴロゴロとイガを手で握れてしまうのだった。
こりゃあ、すごいや。
手や腕が、まるで鋼鉄のロボットアームになったような錯覚すらする。

 で、どんどん拾う。
のはいいものの、中腰で腰を曲げて地面から拾っているから、腰がいたくなってくる。
いちいち腰を伸ばして足先でイガを押し開くことはしない、ということは、かがみこんだまま連続して拾うことになる。
だから腰が痛くなってくる。

 で、疲れるから、しゃがみこんでクリ拾いしようとすると、困ったことに今度は地面のイガが尻に触れて痛い。
地面にはクリのイガがいっぱい落ちているし。
しゃがみこんだちょうど股の真下にイガが落ちてると、尻もしくは股の前方部なもので、なにしろそこは意外と盲点で気付きにくくて、しゃがんでイテッ!、下からトゲが刺さって、いちいち痛い痛い。

 だから連続して作業をしつづけなければならないから、もう、こりゃ大変だ。
たくさんのクリは重たいし、腰は痛いというわけで、一難去ってまた一難だが、手袋着用の技はオレとしてもありがたく今後活用することにしよう。

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