ラズベリーを栽培しよう
 ほんの十数年ほど前までは(一九八〇年代)、オレの近所の園芸店ではラズベリー類は見かけなかった。
果樹としては、まだまだ一般的ではなかったんだろうな。
オレとしてもよく知らなかった。

 なお、オレは、野生のものを木イチゴ、園芸用のものをラズベリーとしているが、基本的には同じ仲間だ。
ただし、ブラックベリーは結構違う種類みたいだけどな。
オレがラズベリーに関心を持ったのは、果樹を栽培するようになってからのことだ。
果樹の本によると、ラズベリーの栽培はとっても簡単だという。

 日当りさえあれば良く育つようだ。
しかも、二〜三年で収穫できることがわかった。
う〜む、なかなか良さそうじゃん。
ただし、欠点として、ラズベリーをいったん植えると、地面から新しい芽を毎年たくさん伸ばして、庭がヤブになってしまうという。

 で、二年ぐらい前の古い枝は枯れてしまうそうだ。
枝にはトゲがあるというし、新しい枝と枯れた枝が混在して、トゲのあるヤブができてしまうのは、とても困ると思った。
ズボラなオレには、管理が大変で面倒くさそうに思えた。
結局、ラズベリー栽培に取り組むのは後回しになった。

ラズベリー苗の購入
 オレが植えた果樹の数々は三〜四年過ぎたが、三年で実がなるどころか収穫はほとんどない状態だった。
なんてこったい!。
待ちきれなくなってしびれを切らしたので、急遽、ラズベリー苗も購入することにした。
ラズベリーは実が成るまでの年月が少ないという点が魅力的だった。

 ヤブになってもかまわん、早く成ってくれ!。
それに、園芸用に改良された「インディアンサマー」というラズベリーは、なんと秋にも実がなるという!。
普通の木イチゴは初夏だけの収穫だというのに、インディアンサマーは五月と十月の二季どりだ。

 こりゃスゲエぜ!。
オレは通信販売で苗木を買うことにした。
買った年は、一九九二年(平成四年)ごろだったかな。
植えた苗は「インディアンサマー」という正式なラベルがついた苗だった。

 だがこのインディアンサマーは、痩せた地面に植えたためか発育不良になってしまった。
オレの手入れも悪すぎたみたいだ。
庭の通路としてジャマになる場所だったためと、気が変わったこともあって、このラズベリーは結局一〜二年で刈り取ってしまった。

 う〜ん、もったいなかった。
振り返ってみると、日当たりの良い場所に植えても、一年ぐらいは発育が良くないみたいだ。
根の張り具合が、まだ不十分だからだろうな。

 ところで、別の場所にもラズベリーの苗を新しく買って、植えてあった。
これは近所の園芸店で買ってきたものだ。
品種名は載ってなくて、ラズベリー(赤)とだけ表示されていた。
多分、これもインディアンサマーだと思うけどな。

秋のラズベリー収穫 一九九七年
 庭で栽培をはじめたラズベリーは、一九九七年(平成九年)の初夏の時点では、まだ充実してなかったためか収穫ゼロ。
むむっ、しょうがねえな〜。
だが、夏の間に、あきれるくらいにモジャモジャに伸びたでやんの。
しかも横倒しになって伸びたから、見た目は悪いし、庭の通路をまたもやふさいで、ジャマで仕方がない。

 園芸の本では「ラズベリーは株立ち性」とか載っているが、確かにそのような育ち方はするけど、雨が降ると水滴の重みでいっせいに横倒しになってしまうんだ。
しかも枝にはトゲがあるから、気軽につかむわけにはいかないのだ。
トゲといっても小さいけど、これが茎にびっしり付いているから、素手で掴むと痛い。

 さて、夏が過ぎて秋になったところ、予想外なことにラズベリーは実を付け出したんだ。
秋だというのに実がなるという、この季節感がボケたような木イチゴの名前だが、二季成りが特徴の「インディアンサマー」という品種らしい。
らしい、というのは、園芸店ではそこまで品名が載ってなかったからで、確実にはわからん。
が、外観はよく似ているし、そもそも二季成りなんて他には見たことないから、オレが育てているのはインディアンサマーだと思うぞ。
とりあえず、これは「インディアンサマー」である、ということにしてみるか。

 たくさん収穫できたし、うまかったから、とても満足した。
このインディアンサマーは、霜が降りる十一月まで収穫が続いていたっけ。
最後の頃は、朝に食べるとヒンヤリ冷たくて、凍ってはいなかったと思うけど、まるでシャーベットの果実だった。

ラズベリーが伸びて花が咲いた
 それにしても、ものすごく気になることは、モジャモジャ伸びてヤブと化してしまったことだ。
なにがなんやらゴチャゴチャで、どうにも困った。
トゲはあるし、オレはがまんしていたけど、なんだかめんどくさくなって、冬に一気に切ってしまったんだ。

 全部切ってしまったのはモッタイなかったなあーと思って反省していたら、春(一九九八年)になって、跡地から新芽がぞくぞく伸びてきた。
やはりそれはラズベリーであった。
ふう〜、助かった。

 順調に伸び始めたので、そのままにしておいたら、五月ごろ花が咲いた。
ラズベリーの株に切り残しがあったので、それに花芽が残っていて、開花したらしい。
サクラの花とは違って、ラズベリーは一斉には咲かないようだ。
これはそのまま収穫期にも反映されるようで、わりと長い期間にわたって収穫できるみたいだな。

ラズベリー収穫
 ラズベリーが熟すのはまだ先だと思っていたが、六月二十一日に収穫できた。
見に行ったら、赤く熟していたんだ。
しかし、この時期は梅雨時のこともあって、熟しすぎるとすぐに腐ってしまう。

写真
赤くなったラズベリー 1998年6月21日撮影

 さっそく食べてみたところ、予想外なことにさっぱりした味だ。
スッぱくはないけれど、かといって、あまり甘くもない。
ひょうし抜けするような淡泊な味だ。
なんてこったい!。

 考えられる理由としては、育てている場所は日当たりがイマイチの場所だし、そのうえ梅雨入りしていて晴れの日が少ないから、日照不足が原因だろうな。
だから甘味が足りないのだろう。
変な味がするものもあったが、それは一部腐っていたみたいだ。
なかにはカビがついたのもあった。

 なにしろ、ラズベリーの果実はデコボコしていて水切れが悪いことと、野外で雨ざらしで育てていることもあって、痛みやすいみたいだ。
でもよ、そうはいっても今は梅雨どきだぞ。
雨が降ったり曇天があたりまえの季節じゃねえか!。
ラズベリーの品種改良は欧米で行われたらしいが、収穫時期も欧米の季節に合わせてあるみたいだ。

 ヨーロッパの六月ごろは一年で一番良い季節らしくて、結婚式もよくやるみたいだし。
梅雨に関しては、オレが住んでいる茨城県では、例年六月十日から七月二十日ぐらいだ。
野生種のモミジイチゴは、五月下旬〜六月上旬に熟期で、早い理由がわかったような気がした。
なお、ナワシロイチゴは六月だけどさ。

ラズベリーの収穫 初夏編
 一九九九年はラズベリーの株が充実したから、今までで最多の結実量だった。
六月中旬から七月中旬にかけて熟した。
園芸品種というか、ラズベリーは野生のモミジイチゴよりも果実が成りやすいようで、実の数も多い。

 だが、梅雨時とモロに重なってしまい、かなりカビてしまった。
ラズベリーは果実の外観がデコボコしているから、水切れが悪いようで、表面の凸凹に水がたまって腐りやすいみたいだ。
梅雨の合間に雨が降らない日があったので、そのとき熟した果実を、まとめて食べることができた。
オレは株を下からのぞきこんで、赤い実を探した。

 けっこう、ざくざく成っているでやんの。
オレは赤い実を探して、その場で食っちまった。
味は、まあまあ良しで、ちょっと物足りなかったが、梅雨時のせいかな。
庭にラズベリーのある生活、とでもいうか、楽しむことができた。

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