爆裂イチジク
 だがこの日本イチジクは、そのままほったらかしにしとくと、過熟して先端がもっと開いてしまい、すごい形になってしまうんだ。

写真
ばっくり開いた日本イチジク 1998年11月2日撮影

 こんな状態になったのをさらに放ったらかしにしとくと、どうなるか。
のけぞってしまって、まるで花が開いたようになってしまう!。
ぐわーっと広がってしまって、ヒトデのような、まるで化け物の花のような、地獄に花があろうなら、こんな形じゃねえのか。

イラスト
こんな姿になってしまうものもある

 もっとも、「イチジクの果実」というのは本来「花」に該当する部分だそうだから、ま、花らしき姿に似てしまうのも無理ないかもな。
しかし、こんなヒトデのような姿になってしまうと、食うのはちょいと勇気がいる。
なにしろすごい外観してるからな。

 ただし、雨が降ったりすると、裂けた果実はすぐに腐り始めて、変な味に変わってしまって地獄の膿の池ごとくなってしまう。
だから、オレは速攻収穫を心がけている。

 なお、イチジクの痛んだ果実には、スズメバチがよく来襲してくるでやんの。
ブンブン飛び回って、まったく恐ろしいったらありゃしない。
果実を採ろうとしても、とても落ち着いて収穫なんかできやしねえ。
恐怖と隣合わせの収穫だ。

 こういうときのスズメバチは、蜂の巣があるときとは違って刺さないらしいが(多分)、オレとしてはイチジクを食っても食わなくても収穫して、痛んだ果実は遠くへブン投げるようにしている。
なお、朝は気温が低いためにスズメバチはあまり来ないので、なるべく朝のときに収穫するように心がけている。
そうはいっても、なかなかそうもいかねえけどな。

桝井ドーフィン登場
 桝井ドーフィンは、日本のイチジク栽培ではシェア一位の品種だ。
ただし暖地向きのイチジクだそうで、東京でも冬に枝が枯れてしまうと本に書いてあった。
これじゃあ、オレが住む北関東では、寒くて植えられないと思った。
だから、今まで植えていなかった。

 日本イチジクが多少収穫できるようになったころ、桝井ドーフィンについて新しい情報を見つけた。
それは、幹の高さを四十センチほどに切り詰めるそうで、この切り株からは新しい枝が伸びるが、この伸びる枝にイチジクの実がズラズラッと成るという。
枝先に成った実でも、枝を引っ張って引き寄せることができるので、簡単に収穫できるそうだ。
冬になれば、再び元の位置まで切り詰めて、これを毎年繰り返すそうで、関西の農家で実際に行われている栽培方法らしい。

 桝井ドーフィンの新しい枝は寒さに弱いと聞いていたが、切り詰めてしまうなら、枝の先っぽが寒さで枯れようと、あまり影響ないとオレは思った。
そこで、桝井ドーフィンの苗を買ってきて、一九九六年に植えた。
そしたら、意外と順調に育ちだした。

写真
植えて二年目の桝井ドーフィン 1998年7月下旬撮影

一九九八年秋の収穫
 一九九八年の秋は、桝井ドーフィンが初めて成った。
うれしいねえ〜。
やっぱりこうでなくちゃいけない。

写真
ドーフィンの果実 1998年9月23日撮影

 順調に育って収穫できたので、満足であった。
味は、うまいっ。
これなら充分合格レベルだ。

 そのうえ、実がとてもたくさん成りやすいようだ。
しかもでかい!。
さすがシェア一位のイチジク品種だ。
実力はすごいもんだ。

桝井ドーフィンの結実習性
 専門書によると、イチジクは枝が伸びさえすれば実が成る、という性質を持っているそうだ。
これは果樹のなかでは、かなり特殊な性質だ。

 というのは、普通の果樹というのは、健全に伸びて育った枝に、まず、花のモトができる。
そして冬を越して、春になって開花して、それから実が育つ、という手順を踏む。
だから普通の果樹は、幹や根元から直接枝が伸びても、その枝には年内は実が成らない。

 だが、イチジクは枝の発育とともに花芽が発生するという。
難しい表現だな。
つまり、細かい枝をみんな切り落とそうが、切り株だけの丸坊主にしようが、枝が伸びさえすれば実が成るらしい。
ホンマかいな?。
日本イチジクはすぐには成りにくいことが経験上わかっていたので、桝井ドーフィンだけの話だろうな。

 オレは確認のため、実行することにした。
一九九八年の年末ごろだったか、桝井ドーフィンの枝を大幅に切り詰めた。
だが、一応、細い枝も少々残した。
やっぱり不安だからな。

桝井ドーフィンの伸長と結実
 だが、一九九九年の一月ごろ、茨城県では、やや強い寒波があった。
この寒さで桝井ドーフィンの細い枝は枯れてしまった。
やられた〜!。
北関東に住むオレとしては、寒害は恐れていた事態だった。
細い枝は枯れて全滅だ。

 幸いなことに、太い幹や根元は生きているようだったので、そのままにしておいた。
五月になって暖かくなったころ、桝井ドーフィンからは芽が全く出てこなかった。
枯れてしまったか?。
だいぶ心配したが、六月ごろだったか、ようやく芽が伸びてきた。
セーフだ。

 桝井ドーフィンの新芽は、幹から直接伸びてきた。
カキやウメも、幹から新芽が伸びてくることがあるが、そういう枝に年内は実は成らない。
桝井ドーフィンは結実するのか?。
果たして、桝井ドーフィンの枝には八月ごろにぎっしり実が成った。
すごい数だ!。

 九月ごろから収穫が始まった。
意外なくらいに無事に発育して、収穫もできた。
味もいい。
イチジクに関しては、桝井ドーフィンと日本イチジクがうまく育って収穫できた。
オレは今後この二つを中心に栽培していくことにしたよ。

イチジクの害虫
 イチジクの病虫害は、いつも感じることだが、カミキリ虫の被害がやたらと多い!。
木の幹からオガクズがモコモコと出てきて、これは幼虫が食べ進んでいるところだ。
幼虫にとっては周りは食べられるところで、つまり食べ物の中に住んでいるわけで、その様子は、ケーキでできたお菓子の家という子供の頃のイメージをオレは連想してしまうぜ。

 その被害は、イチジクだけでなく、カリン、キウイ、ナツメ、ビワ、ブルーベリー、などなど、被害は大きい。
特にイチジクは徹底的にやられがちで、最も被害が大きい。
幼虫は育つとカミキリ虫になるわけで、子供のころイチジクの木でカミキリ虫をよく採ったのも、わかるような気がする。

 で、退治方法だが、穴に針金を差し込むとか、皮を剥がして卵を取り除くとか、本にはいろいろ載っているが、これらの方法は、経験的にいって難しい。
スミチオン(農薬)を注射器で穴に入れる方法が、わりとメジャーな退治方法だが、こーゆー農薬というのは扱い方が、おっかない気がする。
農薬が手に付いても、オレの果樹畑には水道なんか無いからね。
それに、農薬を身近なところに置くと家族が危なっかしいし、衣類に付いてもやっかいだし、古くなった薬は処分にも困る。

 じゃあ、どうするかというと、コンビニとかで売っている室内用のキンチョール(ハエ・蚊用の噴霧殺虫剤)を買ってきて、木の穴ボコ内部へ噴射すると、これが効果テキメンでじつによく効く。
地面に落ちたオガクズを足で蹴散らしておいて、あとで見にきたときに、オガクズが無ければ退治成功だ。

 だから完全無農薬というわけでもないが、とはいえ、オレは農薬はキンチョールしか持ってないけどな。

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