キウイが登場!
 キウイは毎年豊作なんで、オレは気に入っている。
栽培している果樹のなかでも、今までの総収穫量が一番多いのはキウイだもんな。
キウイは家庭果樹として、一九八〇年代にはすでに大変有名になっていて、近所でも広く栽培されていた。

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毎年よく成ってる
2008年11月8日撮影

 果樹の本にもキウイのことがよく載っていて、説明文でも「栽培は簡単」と紹介されていたんだ。
本の写真でもギッシリ実が成っているキウイが印象的だった。
オレもキウイを栽培することにしたよ。

 さて、キウイの苗木を買うことにしたが、キウイといっても、いろいろな種類があることがわかった。
普通のキウイというのは、当時、というか現在でもそうだが「ヘイワード」という名前の品種なんだ。
ヘイワードの果実は大きいことが特徴で、スーパーマーケットで売っているキウイも、ほとんどがヘイワードだ。
園芸店で売っているキウイ苗木もヘイワードが多い。
収穫期は十一月だ。

 だけど、十一月という収穫時期が気になった。
オレが住んでいる茨城県は暖地というほどじゃなくて、十一月になると霜が降りるからだ。
霜が降りると、葉っぱが枯れてしまう。
キウイが成熟する時期に落葉したのでは、キウイが完熟できなくて味がイマイチになるかもしれないと不安に思った。

品種選び
 そのころ、香緑(こうりょく)という新しいキウイが登場して、当時の果樹カタログで盛んに紹介されていた。
香川県で開発されたキウイだそうで、中身の緑色が濃いことから「香緑」と命名されたそうだ。
そのうえ甘味も強いという。

 なんといっても大きな特徴は、早生のキウイだそうで、十月下旬から収穫できるそうだ。
十月下旬収穫か。
こりゃいいかもよ!。

写真
香緑のカタチは俵型
2012.12.14 撮影

 オレが住む茨城県での霜の時期だが、社会科の教科書の資料に気候地図が載っていたので、それで調べることにした。
水戸市は、十一月上旬に初霜、だそうだ。
一方、香緑の収穫時期はちょっと早くて十月下旬。
よし、香緑なら大丈夫だ、と考えて、買うことに決めた。

 通信販売で苗木を購入することにして、香緑と、オスの木、そしてヘイワードも一応買った。
時期は、確か一九八八年ごろだったと思う。
宅配便で届いたので、苗木をさっそく畑に植えて、栽培を始めた、というわけだ。

キウイの垣根仕立て
 苗を植えればもう大丈夫、とすっかり安心してしまったが、キウイは「棚」が必要だからな。
ブドウ棚みたいなやつだ。
でも、作るのは、と〜っても大変そうだ。
買うとしても、金がかかるしな。

 オレがキウイを植えた畑には、栗(クリ)の幹が残っていた。
というのは、この畑では以前、親が栗を植えて栽培していたんだ。
しかし古くなって虫害が多くなってきたこともあって、親の許しを得て切り倒して、新しく果樹を植えたわけだ。

 だが、切るといっても、栗というのは木質が硬い方のようで、太さ三十センチぐらいの幹をノコギリでゴリゴリ切っていると、すっごく疲れてしまうんだ。
切り倒した木はさらに短く切らねばならないから、一本切り倒しただけでも疲労困憊してしまい、とてもじゃねえけど、何十本も切れねえよ〜。

イラスト
幹と幹の間に、電線をこんな形でつないだ

 というわけで、栗の上部の枝だけ切り落として、幹はそのままのものがあった。
細い枝葉は切り落としたが、太い幹部分は切るのを後回しにしたわけだ。
この栗の幹を、キウイを植えるさいに流用することにした。
幹と幹の間に電線をつないで、この電線にキウイのツルを巻かせることにした。

 電線といっても、電気は通っていない。
単なるひも代わりだ。
なにしろ、棚は作るのはめんどくさいのに、キウイの苗木はすでに植えてしまっていた。
キウイのツルが伸びるところだけは、とにかく確保しないとね。

 本格的な棚を、いずれは作ろうと思っていたよ。
「電線垣根」は臨時的に作ったんだけど、結果的にはこれが予想外に調子が良かった。
毎年たくさんのキウイが成ったので、結局十年近くそのままにしてしまった。
意外とうまくいったよ。

 ただしその後は問題があって、十年目のころから電線の真ん中が垂れ下がるようになってしまった。
高圧線の電線みたいに、弓なりに垂れ下がるようになってしまったんだ。
というのは、まず第一に栗の根元が腐り始めたことだ。

棚作り
 さらに、キウイの果実が大量にぶら下がることによって、幹が引っ張られて傾いたんだ。
最下段の線などは、地面に着きそうになって、雑草に埋もれてしまったもんだ。
だから、ようやく棚に作り替えた、というわけだ。

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栗の幹が一部混じっている姿

 栗の幹は残してあって、棚の柱の一部としてまだまだ使うことにした。
とはいっても棚を作るのはしんどい。
オレ一人では作れなくて、かなりの部分を親に作ってもらったがな。

 一般的に棚というと、人の背丈くらいにして、下から棚を見上げるようにすることが多いけど、オレの場合は、畑の面積の制約上で、棚はひょろ長い形に作った。
棚の高さも、太くて長い材木が無かったので、胸ぐらいの高さにした。

 たまたまこういう形になったんだけど、意外なことに、この棚の方が管理しやすいんだ。
なんといっても剪定が楽になるのがありがたい。
キウイの剪定作業というのは、とっても面倒くさいからね。

花が咲いた
 一九九七年のことだ。
五月の連休のころは、花は咲かなかったと思う。
咲いたのは五月下旬だったかな。
花といってもキレイなやつじゃないぜ。
果樹としては大きくて白い花だけど、なんというか、まあ、やぼったい花とでもいおうか。

写真 写真
左がメスで、右がオス、らしい。

 メスの花は、中央に白っぽくてひょろっと長いものが、それがメスの花の証拠のようだ。
キウイにはオスとメスの木があるというのは有名だと思うけど、オレのとこでもオスの花が咲いてくれた。
それも初めて、だ。

 それまでオスの花は、咲いたことがなかったんだ。
日当りも不十分だったし、管理が悪かったんだろうと思う。
でも、キウイは昨年以前もちゃんと収穫できていたんだ。
メスの花だけなのに。

 理由は多分、近所のどこかにキウイのオスの花があって、ミツバチとかによって、遠くから花粉が運ばれて、受精したんじゃないかと思う。
以前に収穫したキウイには、タネがあまり入っていなかったもんな。

小さな果実
 で、キウイの花の季節が終わると、キウイの果実はさっそく大きくなりはじめた。
枯れた花びらがまだ残っているけど、幼い果実はフワフワした毛に包まれて、ぐんぐん大きくなっていった。
果実の表面の毛、というのはキウイ独特だと思うけど、それが小さな果実のときはとっても柔らかいんだ。

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花が咲いてから半月ぐらい
果実の毛は、この時期はまだフワフワだ。
1998年6月上旬撮影

 まるでヌイグルミみたいで、小さな果実でかわいい。
なお、花が咲き終わってからの果実の発育は急激だ。
あとはひたすら大きくなりつづける。

 小さな果実が、一ヵ月ぐらいもすれば、握り寿司ぐらいのサイズまで一気に育ってしまう。
柔らかいフワフワ毛も剛毛に変身してしまい(ちょっと大げさ)、この時期のキウイの成長の早さにはいつもながら驚いてしまう。

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まだ7月上旬だが、すでに結構大きい

 このころの時期は、もう梅雨だし、雑草がモジャモジャ伸びだした畑に行くのは、オレとしてもいやになってあまり行かなかったから、様子はよくわからない。
まあ、ツルが猛烈に伸びまくっていたのは確かだ。
キチンと剪定をしていても、ゴチャゴチャになってしまうんだもんなあ。

 八月以降も果実は成長しているだろうけど、初夏のころにくらべればずっとゆるやかな感じだ。
暑くなると、雑草を刈り取るのがメンドくさくなって、管理もテキトーになってしまい、早く収穫できればいいなあ〜と、オレは思ったりしている。

キウイいよいよ収穫だ
 秋が到来し、さらに深まって、いよいよ収穫の時期だ。
十一月になると、ここ茨城県北西部の常北町は、寒くなり始める。
気象統計では例年十一月五日ごろに初霜なんだそうだ。

 ただし、十一月上旬の霜は最初は弱いから、キウイの葉っぱはすぐには枯れない。
だから収穫は、あまり急がなくても大丈夫だ。
香緑というキウイは、オレのところでは主に十一月に収穫している。
毎年豊作だ。

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収穫間近の香緑 1998年11月23日撮影

 香緑という十月下旬に収穫できる早生キウイをメインに植えたけど、今になって思うには、茨城県であってもヘイワードで大丈夫だったけどね。
つまり、当初「香緑」を重視していたけど、今となってはそんなにこだわらなくてもよかったと思っているんだ。

 結果論だが、香緑は果実が早く熟しすぎるというか、痛みやすいというか、日持ちがしないんだ。
正月ぐらいまでしか持たない。
ヘイワードは冬の間は充分保存できるようで、四月ぐらいまで大丈夫らしいけどな。

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